柏レイソル戦に臨んだサンフレッチェ広島で、リーグ得点王のオルンガとマッチアップしたのが荒木隼人だった。大卒2年目の若きCBは、リーグ屈指のFWと激しいバトルを展開。ついぞゴールを許さず、90分を終えた。

上写真=オルンガと丁々発止のバトルを展開した広島のCB荒木隼人(写真◎Getty Images)

■2020年9月19日 J1リーグ第17節(観衆2,728人/@三協F)
柏 1ー1 広島
得点:(柏)北爪健吾
   (広)ドウグラス・ヴィエイラ

まずはシュートを打たせないことを意識した

 もう一度立ち上がるために負けられない試合だった。前節、広島は川崎フロンターレに1-5と大敗。屈辱的な失点を重ねた。CBの荒木隼人は「前節は5失点とチームとして悔しい結果に終わり、今週は自分たちがこれまでやってきたことを確認した」と、この日の柏戦に臨むにあたり、1週間をかけて守備の整備に努めてきたことを明かした。

 果たして広島守備陣は組織立った守りを披露した。とりわけ目立ったのが、その荒木である。対柏の一番のポイントと言えるリーグ得点王のFWオルンガとマッチアップしたからだ。

 オルンガは高さとスピードがあり、体も強靭でその上足もとの技術にも優れる、まさしくコンプリートストライカーだ。そんな選手と丁々発止のバトルを繰り広げた。

 40分には荒木のクリアが小さくなったところを三丸拡に拾われ、ラフな浮き球を背後に入れられた。広島のGK林卓人とオルンガが競り合ってこぼれたボールをシュートに持ち込まれたが、戻っていた荒木がゴールライン上に間一髪クリア。危なかったのはこの場面くらいか。58分には古賀太陽からクサビのパスが届くと同時に反転を許したが、「懐が深いので無理にくっつかずに反転したところを突くことも意識していた」という狙い通りのプレーで抜け出しを阻止している。多くはこの58分のプレーのように、うまく対応し、きっちり抑えていた。

 オルンガの脅威にさらされ続けたのは事実だろう。しかし、荒木はその脅威に最後まで屈することはなかった。

「(これまでに)いろんな場所からシュートを決めていたので、まずはシュートを打たせないことを意識してプレーしました」

 時に強めに体を当て、時にフッと力を抜いてオルンガをいなして守った。縦パスに対してより早く反応して先にボールに触るケースもあった。もちろん、すべてのバトルで勝利できたわけではなく、何度か起点も作られたが、それでもオルンガにゴールを許さなかった。

 試合は結局、前半早々に挙げた1点を守り切れず、オルンガがビルドアップに絡んだ攻撃で北爪健吾にゴールを許して引き分けることになった。ただ、荒木自身の出来は悪くないものだった。

「前回は後半の立ち上がりに失点してしまって、今回は前半の終わり際で失点してしまった。試合の初めと終わりの集中力はもっと高めていかないといけないと感じています」

 それでも荒木は、試合後にチームの課題を指摘した。リーグ屈指のFWと渡り合った貴重な90分についてよりも、失点の悔しさが口をついた。この向上心こそが、荒木の成長を促している。プレー同様に、その姿勢も大いなる可能性を感じさせる。

 今季の広島でここまでリーグ戦全試合に先発フル出場しているのは、キャプテンの佐々木翔と荒木だけだ。大卒2年目、24歳のCBに指揮官が期待を寄せている証だろう。