9月16日、明治安田生命J1リーグ第24節の横浜F・マリノス対清水エスパルスが日産スタジアムで行なわれ、横浜FMが5試合ぶりの白星をつかんだ。約1カ月ぶりに先発した水沼宏太は、勝利に貢献した充実感をにじませていた。

上写真=約1カ月ぶりの先発で勝利に貢献した水沼(写真◎Getty Images)

■2020年9月16日 J1リーグ第24節(@日産ス:観衆4,171人)
横浜FM 3-0 清水
得点:(横)エリキ2、オナイウ阿道

自画自賛の絶妙クロス

 1点リードで迎えた22分のことだった。右サイドでボールを受けた水沼は、すかさずボックス内へとクロスを送る。清水の最終ラインの裏へのボールは、飛び出したオナイウ阿道へ。ワンバウンドしたボールにオナイウが懸命に足を伸ばすと、ボールはGKの頭上を越えるループシュートとなって、ゴールに吸い込まれた。

「決めた阿道が上手だったというのはあるけど、あそこはずっと狙っていたところでもある。相手にとって嫌なボールを繰り出すのが自分の仕事で。タイミングと入れたコースと球のスピード、そういったもの全部が良かったのかなと思う」。水沼の口調に、満足感がにじんだ。

 水沼はこの場面以外にも、相手最終ラインの裏を突くボールや、GKとの間への速いクロスを送り、清水ゴールを脅かしていた。3点目のゴールも、またもオナイウを走らせる水沼のスルーパスが起点となった。ゴール前に入り、シュートを放つ場面も。75分に拍手を浴びながら、交代でピッチを後にした。

 ここ2試合はベンチに入っていたが、8月半ばからメンバーを外れるようになっていた。先発したのは8月8日の柏レイソル戦が最後。その間にチームは連敗し、フォーメーションも3バックに変わっていた。

「連敗していたので、勝つために自分ができることは何か、チームためにどれだけ働けるかと考えた。ウイングバックで出るイメージはできていたので、サイドで時間をつくることもそうだし、ゴールにかかわっていくことや、アップダウンを繰り返してどれだけチームを助けられるかが大事だと思った」

 ジュニアユースから横浜FM一筋だったが、トップチーム昇格後はなかなか出番に恵まれなかった。その後J2暮らしも含めて4クラブを渡り歩き、10シーズンぶりに帰ってきた。確かに、頼れる選手になっていた。

 連敗している状況で、チーム内で話し合いも行なっていたという。チームを上昇させる答えは簡単には出ないが、「試合をやっていく中で見つけるものだと思う」。この日の試合も、その一助となったことだろう。

取材◎杉山 孝 写真◎Getty Images