上写真=4試合の出場ですべてフル出場。90分を戦い抜くリズムは身についた(写真◎J.LEAGUE)
■2020年9月16日 J1リーグ第24節(@味スタ:観衆4,782人)
FC東京 2-3 大分
得点:(東)レアンドロ、品田愛斗
(大)松本怜、田中達也、野村直輝
「体力には自信はあるので」
念願のプロ初ゴールだ。90分、レアンドロが自陣からのロングドリブルでペナルティーエリアの中まで持ち込み、レアンドロが触って田川亨介が左からシュート、これをGKが弾いたところに突っ込んできたのが品田愛斗。ヘッドでそのままゴールに押し込んで、記念の一発を決めてみせた。
しかし、手放しで喜ぶことはどうしてもできなかった。この得点で2-3と追い上げて、あきらめない気持ちを表現したのは良かったのだが、その前の大分トリニータの3点目のきっかけが、ほかならぬ自分だったから。
「3失点目は自分が奪われてからで、1失点目も2失点目も自分たちのミスからでした。それはなるべく少なくしなければいけないと思うので、次に生かしていかなければと思います」
まだ今季4試合目の出場の愛弟子に、長谷川健太監督は一定の評価を与えている。
「3失点目のきっかけで奪われたところはなくしていかなければいけませんが、試合ごとに存在感を示してくれています。機を見てゴール前に入っていったところは、得点のセンスが出たと思っています。もともとそこは持っている選手なので、ミドルシュートを狙ったりして自分を出せるようになればもっと良くなるのではないか。今日はよくプレーしてくれたと思います」
チームの舵取りを担う難しいアンカーのポジションを任されるが、その得点のセンスはゴールシーンの他にも見せていた。FC東京が1-1に追いつく61分のゴールは、アルトゥール・シルバが中央で受けて左の永井謙佑へ送り、小さく戻したボールをレアンドロがゴール右に巧みに流し込んだものだった。その起点となったのが、アルトゥール・シルバへ差し込んだ品田の鋭い縦パスだった。
「最初は浮き球でキーパーとディフェンダーの間に落とそうと思ったんですけど、一瞬ギャップができたのが見えたんです。他の選手の立ち位置の関係も見えたので、あそこに出せば何かが起こると思って出しました」
相手最終ラインの手前にできたおいしいスペースを見逃さなかった。
今季はまだ4試合の出場とはいえ、すべてフル出場だ。アンカーというポジションの自分なりの解釈にも自信をつけてきたようだ。
「アンカーは広範囲を守ることを求められます。体力には自信はあるので、監督からもそこは評価されているのかと思います」
「自分の特徴でもあるので、他の選手とは違うアンカーの働きができています。自分のできることがやれています」
同じアンカーの高萩洋次郎が抜群のテクニックと視野の広さで攻撃を組み立てていくコンダクタータイプで、品田の場合はより広範囲をカバーして守備で仲間を助けるスタイルだろうか。そこに攻撃のエッセンスを加えたこの90分間で、また成長したように見える。
「自分の中で変化はないんですけど、チームを勝たせられる選手になりたいので、それが出たのかなと思います」
とつとつとした口調だが、強い意志は隠せない。次にピッチに現れるときは、さらにスケールアップしているに違いない。
取材◎平澤大輔 写真◎J.LEAGUE