明治安田生命J1リーグは多くのチームで1週空くスケジュールだが、FC東京は9月16日に大分トリニータをホームに迎える。今季は若手の台頭が目立つ首都のクラブで、勝ちながら育てる手腕を見せる長谷川健太監督流の育成術とは。

上写真=若手を起用しながら勝つ。長谷川健太監督は難しいミッションに挑んでいる(写真◎Getty Images)

「伸びるときには一気に伸びる」

 Jクラブのトップチームの監督が、若手選手を育てながら勝つ、というのは難題だ。勝つことによって評価を高めるべき将が、若い選手の成長を待つことの難しさに悩まされてきたのはいつの時代でも同じだろうが、いま、FC東京ではそのサイクルが好転しているようにも思える。

 17試合を終えて勝ち点32の暫定3位。第16節のヴィッセル神戸戦のあとにこの数字について、長谷川健太監督は「選手はよく頑張っている」と評価したが、多くの若手がこの数字に寄与したことも事実だ。

 安部柊斗(22歳)、中村帆高(23歳)、中村拓海(19歳)、田川亨介(21歳)、内田宅哉(22歳)、波多野豪(22歳)、品田愛斗(20歳)、原大智(21歳)、紺野和也(23歳)、木村誠二(19歳)、平川怜(20歳)

 年齢でサッカーをするわけではないが、昨季はアマだった、あるいは多くの時間をプレーできなかった選手たちに経験が必要なことは明らかだ。最近になって、そんな上記のような彼らがピッチの中で躍動する機会が増えている。

 長谷川監督は「本人の努力はもちろん、コーチングスタッフの指導もあって徐々に伸びてきたということです」と若手の成長をしっかりと見守るクラブの態勢について、強調している。もちろん主力の移籍や負傷、過密日程におけるローテーションの影響もあるだろうが、その上で「自分自身のものさしでいけると思った選手を送り出しています。もちろんこのぐらいはできるだろうと送り出しているので、期待通りに応えてくれていると思っています」と若手であってもメンバーとして選ぶ以上、選手への信頼は揺るぎない。

「神戸戦は難しい前半でしたが、後半はしっかりとアジャストしてくれたと思っています。若い選手たちは1年目や2年目にルヴァンカップや天皇杯で起用して力不足だったけれど、失敗を繰り返す中で経験して学んでいまのパフォーマンスがあります。たくさんJ1の試合に出ることで経験値をもらって、この前の神戸の試合につながったわけです。神戸のように個のクオリティーが高いチームと戦って彼らなりに刺激を受けたはずですから、今後の飛躍、成長に期待したいと思っています」

 その神戸戦では今季初めて、平川怜が89分にピッチに登場した。

「着実に成長していると思っています。変化は、我慢できるようになったこと、ですね。悔しい思いを一番持っている若手だと思っています。久保建英と比較され、ある意味では建英よりも能力が高いと周りから評価されていたにもかかわらず、片やスペインでプレーし、自分は試合に出られない悔しさの中で、我慢ができるようになってきました。大人のプレーヤーになってきましたね。毎日コツコツとトレーニングしていますし、チャンスあればいつでも彼を、と思って見てきました。前回は短い時間でしたが、持っている力を見せてくれました。チャンスあれば使っていきたいと思っています」

 若手育成のポイントを「伸びるときには一気に伸びる、でも続かないのも若い選手の特徴。長い目で見て、一気に伸びたら叩くところは叩きつつ伸ばして、チームを活性化させていく」ところだと語る長谷川監督。その意を受けた彼らが一本立ちすれば、FC東京はさらに強くなる。