明治安田生命J1リーグ第15節で見事に昨季王者の横浜F・マリノスを撃破した名古屋グランパス。続く相手は横浜FCだが、その戦いぶりを分析したマッシモ・フィッカデンティ監督は「柔軟性」をキーワードに挙げた。

上写真=横浜FMのポステコグルー監督(左)と。両監督のアイデンティティーがぶつかる好ゲームだった(写真◎J.LEAGUE)

成熟したチームにたどり着きたい

 明治安田生命J1リーグ第15節では、横浜F・マリノスに開始直後に先制されながら、会心の逆転勝利。マッシモ・フィッカデンティ監督は改めて「淡々と戦ってくれた」と選手を労った。

「強いチームを相手にああいった展開で始まりましたが、それでも勝ち試合にもっていくための準備の段階で手応えを得ていましたし、試合時間はまるまる残っていました。選手たちはどっしり構えて状況を受け入れて、淡々と戦ってくれました。こういう勝利はこの先のことを考えても、メンタル的に開放感を伴った上で、聞く耳を持つことができますので、頭の部分でいい影響があると思います。実際に選手にもそういった様子が見受けられます」

 ポイントになったのは、フィッカデンティ監督自身が試合後に語った「ハングリー精神」の部分。ただ、補足するようにこうも話す。

「試合に勝ったから、選手たちの取り組み方や試合の入り方、試合の回し方のすべてが良かった、ということではなくて、負けた試合でも気持ちを込めて全力を出してくれていました。他の試合でもハングリーさを出していれば負けなかった、とは思っていませんし、どの試合でもしっかりやってくれていました。勝ったからすべてが良くて負けたからダメだった、というとらえ方をしてもらいたくはないと思っています」

 どこまでも選手の姿勢に厚い信頼を置く言葉だが、それは相手チームに対しても同様のようだ。次節の相手、横浜FCについて分析した上で、独自の見解を披露するのだ。

「若い選手がいて経験のある選手もいて、いろいろなメンバーを試合によって起用しています。ですから、若さだけではなく経験が生きるようなプレーをピッチで表現できるチームだと思います」

「(昇格チームだから)勝ち点を取るのが難しいと思っていた人も多いようですが、良いサッカーをしようとチャレンジしていることが分かります。前節はあのFC東京をも追い詰める内容でした。いままでのチームとは特徴が違うと感じていて、しっかりと警戒して戦うつもりです」

「コンパクトにプレーしようという意識を感じますし、守備でも攻撃でもサボらず、何人かの選手が持つスピードも武器になっています。その点について、選手と理解した上で戦う準備をしています」

 まずは相手をリスペクトする、というのがマッシモ流ではあるが、それにしてもかなりの褒めようだ。もちろん、対抗する策を仕込んでいる自信があるからの発言だろうが。

「監督として理想とするのは、時間帯によって、あるいは試合の状況によって、常に分があるようにもっていける強さを持つことです。成熟したサッカーにたどり着きたいと思っています」

「マリノス戦では、非常に特徴のあるスタイルを打ち出す相手に対していい形でボールを持たせたくないので、試合を通してプレスを掛け続けました。しかし横浜FCは、相手が前から奪いにくるなら放り込んでいい、とする柔軟性のある監督に率いられています。もちろん、なるべく前から奪いにいきたいと思っていますが、それがワンパターンになると裏を取られてしまうかもしれません。誰が試合に出てくるかによってどのように対応していくのかはしっかり準備をしました。いろいろな状況に対応したいと思います」

 その言葉を額面通りに受け取れば、横浜での90分は、柔軟性を持ったチームに柔軟性で対抗するゲームになりそうだ。