ヴィッセル神戸は9月9日、J1第15節で川崎フロンターレと対戦し、2-3で敗れた。描いたプランの通りに進みながら終盤に逆転され、トルステン・フィンク監督は悔しさを隠さなかった。それでも結果を正面から受け止めつつ、視線を次戦へと向けた。

上写真=勝利に近づきながら川崎Fに逆転を許してしまった神戸のフィンク監督。悔しい敗戦を糧に次節へと目を向けた(写真◎J.LEAGUE)

■2020年9月9日明治安田生命J1リーグ第15節(@等々力/観衆4,778人)
川崎F 3-2 神戸
得点:(川)小林悠、レアンドロ・ダミアン、宮代大聖
   (神)古橋享悟、藤本憲明

勝つべき試合だったと思う

「今シーズンのリーグを圧倒しているチーム相手に、すごく良いパフォーマンスを発揮できたと思うし、勝つべき試合だったと思う」。会見でそう語り始めたフィンク監督の言葉には、誇張も強がりもなかった。

 3週間で3度目の対戦となる9日の試合で、ここまで2戦で未勝利の神戸からは、勝利への執念が感じられた。今季2戦は4バックを敷いていたが、「昨年、川崎との2試合でどちらともうまくいったので」と、3-5-2へとフォーメーションを変更。ただし序盤に不具合を感じ、早々にPKで先制されたこともあり、藤本憲明をトップに据えて古橋享悟と山口蛍を2シャドーに置く3-4-3へと切り替えた。選手が素早く対応できたのも、周到な準備があればこそだろう。

 川崎Fのアンカーを務めた守田英正が「疑似カウンターのようだった」と語ったとおり、神戸は後方でボールを回して相手を誘い出し、時折ロングボールを送って、こぼれ球の回収からの打開も狙った。鋭い縦パスやCBの持ち上がり、素早いサイドチェンジを織り交ぜて、川崎Fの攻撃的な姿勢の裏にあるスペースを突く。古橋と山口は、指揮官の期待に応えて幅広い動きで飛び出していく。2つのゴールは、まさにそうした狙いの結実だろう。

 強敵相手に先制されながらも、後半半ばに逆転する見事な展開。だが、川崎Fとの3連戦第1ラウンド、8月26日のJ1第24節と同じ悔恨に襲われる。「2-1から3-1にするチャンスがあった」。この試合までにも何度も繰り返したフレーズを、また口にすることとなった。

 前がかりになる川崎Fの裏を突き、ボールがポストを叩くシーンが2度あった。試合を決める3点目を取ろうと、2人のFWを1人ずつ交代で送り込んでいたのだ。しかし、その後もゴールと試合を決め切る瞬間は訪れず、またも追いつかれ、さらには逆転を許してしまった。

 リードしている状況で試合の行方を決めるジョーカーになれる経験ある選手がいない状況を嘆きつつ、フィンク監督は「運が足りないところもある」と語った。プラン通りに進んでいただけに、胸の内では誰よりも悔しがっているはずだ。試合中には、川崎Fのエリア内でのハンドに見えたシーンなど、ピッチ際まで飛び出して何度も大声を張り上げていた。

 それでも、指揮官は、落ち着いてこう語った。「残念だが、サッカーにはこういうこともある」。選手として、ドイツと欧州の頂点に立った男は、襟を正して次のリベンジの機会へ準備を進めると誓った。

取材◎杉山 孝