サガン鳥栖の先制ゴールに、浦和レッズ戦での狙いが集約されていた。自陣からのパス1本で攻略した裏のスペース、仕掛けるタイミング、そのすべてがスカウティングで準備してきたもの。そして狙いを体現したのが、趙東建だった。

上写真=電光石火のカウンターで先制ゴールを決めた趙東建(左)(写真◎J.LEAGUE)

■2020年9月9日 J1リーグ第15節(@埼スタ/観衆4,398人)
浦和 2-2 鳥栖
得点:(浦)興梠慎三、武藤雄樹
   (鳥)趙東建、林大地

次につながる電光石火のカウンター

 鮮やかなカウンターアタックだった。0-0で迎えた12分、樋口雄太がロングパス1本で相手左サイドの裏を取ると、趙東建はゴール前中央へ一直線に走る。樋口からクロスが入ってくる瞬間、相手マーカーの視界をすっと姿を消し、勢いそのまま豪快なダイビングヘッドでゴールネットを揺らした。金明輝監督は準備してきた形が出たことに手応えを得ていた。

「スカウティングしていたスペース、タイミングを突けました。狙いどおりです」

 趙東建にとっては今季2点目のゴール。4試合連続で先発出場を続ける34歳は、得点以外の仕事もきっちりこなし、チームに貢献していた。前線から体を張って起点をつくり、相手ボールを必死に追い回す。ベンチに退く56分まで足を止めることはない。気温29.6度、湿度60%の厳しい環境でも力を振り絞った。

 2017年に来日して4年目。汗をかき、最後まで戦う鳥栖イズムは骨の髄まで染み込んでいる。熱帯夜の連戦が続いても、その姿勢は変わることはない。昨季は10試合に出場し、無得点。ストライカーとしての影が薄くなりつつあったものの、今季は再びエネギッシュな姿が戻ってきた。本人も意欲を燃やしている。

「チーム内でもコミュニケーションを取れていますし、しっかり準備ができています。練習から修正できるところは修正して、次に向けてやっていきたいです」

 若返りを図るチームでも、勝負どころを知るベテランの力は頼りになる。今季、目指すのはトップ10入りだ。若手たちと一丸となり、ここから徐々に巻き返していく。

取材◎杉園昌之