名古屋グランパスの右サイドバックを担うのが、19歳の成瀬竣平だ。開幕からコンスタントに出場して急成長でチームを支えている。そのポリシーは「守ってから攻める」。まさに現在のグランパスイズムの申し子だろう。

上写真=FC東京とのルヴァンカップ準決勝は後半から登場して攻撃に注力した(写真◎Getty Images)

「同世代に負けたくない」

 右サイドバックとしての自分の強みは、攻撃にある。今季台頭してきた成瀬竣平は、ストロングポイントがどこにあるのかはっきりと理解している。

 でも、だからこその「守備」なのだ。

「まず守備の選手として、失点しないためにどうやって守っていくかが自分として一番大事に思っていることです。守備をした上で、攻撃的なところで自分の特徴を生かして得点につながるプレーを増やすのが一番の課題です」

 9月2日のJリーグYBCルヴァンカップ準々決勝では、前半でFC東京に1点を先行される展開。逆襲のキーマンの一人として金崎夢生、米本拓司とともに後半開始からピッチに躍り出た。

「後半立ち上がりで失点しないことを前提に意識したんですけど、後半8分に失点してしまって流れが悪くなってしまった」と悔やむばかりだが、0-2になったから余計に自慢の攻撃力を生かす必要があった。途中からの豪雨にも負けずに、高い位置から積極的にボールに絡んでサイドアタックを担っていった。

 8月15日に明治安田生命J1リーグの第10節でFC東京と対戦したときには、2度の警告によって退場処分を受けていた。「そのリベンジじゃないですけど、得点につながる1本のパスや得点という結果がほしかったんです」と強い思いを持って臨んでいた。残念ながらそれが実らないまま0-3で敗退が決定してしまったが、その執念はリーグ戦に向けていく。

 次の相手は鹿島アントラーズ。今季最初の公式戦となったルヴァンカップグループステージ第1節で対戦していて、1-0で勝利、自身はフル出場しているのだが、「個人としては納得のいく試合ではなかった」と自分にダメ出し。加えて「若い選手が出ているという印象があって、同世代に負けたくない」から、成瀬にとっては2つの意味で重要な一戦になりそうだ。

「まだアシストができていないんですけど、いい守備をして攻撃につなげていくという流れで、アシストや得点をしていくのが優先順位として大事だと思っています」

「攻撃がうまくいくときはいい守備が成り立っています。しっかり守った上で、どうやって攻撃につなげていくのか。どの試合でもそこがうまくいけば、点が入っています」

 あくまで守備があっての攻撃というスタンス。そのバランス感覚はまさに現在のグランパスイズムを体現している。今季はすでに10試合にプレーしていて、若くして主力の座を射止めている。J屈指の強豪、鹿島を相手に「守って攻める」の信念で目に見える結果を出せば、成長の速度はどんどんと増していくだろう。