明治安田生命J1リーグで10連勝の記録を達成した川崎フロンターレ。名古屋グランパスに敗れ、ヴィッセル神戸に引き分けて停滞かと思いきや、期待のルーキー旗手怜央にJ1初ゴールが生まれるめぐり合わせ。再浮上だ。

上写真=神戸戦でJ1初ゴール。旗手が待望の1点を決めた(写真◎Getty Images)

「僕が薫を生かす」

 ついにスコアシートにその名を刻んだ。川崎フロンターレのルーキー、旗手怜央がJ1リーグ初ゴールをマークした。J1第24節・ヴィッセル神戸戦の75分、同期の三笘薫の左からの浮き玉のパスを中央で胸トラップしてから、そのまま左足のボレーできれいに送り込んだ一発。

「それまでにもっと簡単にゴールを決めなきゃいけないところはありましたけど」と自嘲気味に苦笑いもするが、「ああいう形で決められてうれしかった」とビューティフルゴールにガッツポーズも自然と出た。「チームは10連勝していて、その中でアシストはありましたが、自分はゴールを決めて生き残っていく選手。ずっと決められなくて悔しかった。そういうこともあって、ふと出たガッツポーズでした」

 ここまでゴールがなかったことを、実は気にしていたという。周りから「ゴールはまだ?」とか「早く決めたいね」と言われていて、「気にしないようにしてたけど、言われてしまうと、ああ、まだ決めてないなあと実感してしまいました」と複雑な胸の内だったようだ。

 名古屋グランパスにアウェーで敗れて、ついに連勝が10でストップした3日後のゲーム。アウェー連戦で、連敗は避けたくて、しかし神戸に主導権を握られながらの戦いとなって、苦しい条件が重なっていた。鬼木達監督も「負けてもおかしくなかったかもしれない」とする内容だったから、2-2にするこのゴールがチームに勝ち点をもたらしたという意味で、非常に大きな価値を持つことになった。

 これまで決めていなかった、といってもリーグ戦の話で、「プロ初ゴール」はその前に決めている。8月5日のJリーグYBCルヴァンカップグループステージ2節で鹿島アントラーズから奪っている。3-0とするゴールだったが、そのあと2点を返されたので決勝点。左からのセンタリングを押し込んだのだが、これもお膳立てしてくれたのは三笘だった。ルーキーコンビの面目躍如だ。

 このゴールでは、左サイドでボールを持った三笘が、右足のアウトサイドで鋭いセンタリングを逆サイドの旗手まで送り込んでいる。左足ではなく。守る方は意表を突かれた格好だが、旗手には分かっていた。

「大学1年からずっとやっていて、お互いの良さを知っているし、僕が薫の良さを生かして、薫も僕の良さを分かっていると思います。2人で共有できるプレーがたくさんあります。あのアウトサイドのパスも分かっていたし、そういうものが徐々にゴールに結びつく形になっていると感じてきています」

「やっとかよ!」とイジられたJ1初ゴールをきっかけに、あとは上っていくだけだ。自信も課題も、しっかりと見えている。

「ゴールに向かっていくプレー、守備のハードワークや戦うところは自信があります。課題は判断の部分。まだまだ遅いなと感じているので、早くしていきたい」

「攻撃ならワンタッチなのかツータッチなのか、とか、守備なら前からいくのか引くのかという判断で、個人のところのスピードを上げていきたいです」

「守備はチームとしてやるべきことが前からプレッシャーをかけていくということなので、最初に行くのは(自分がプレーしている)ウイングのポジション。怖がらずに前にプレッシャーかけていきたいなと思います」

 連戦にあっても、読書や映画鑑賞で頭の切り替えはスムーズだと話す22歳の新星。無事にリーグ戦でもゴールを決めて一つ壁を越えただけに、一気に量産してもおかしくはない。