マテウスの左足が、すごい。明治安田生命J1リーグで好調を続ける名古屋グランパスにあって、背番号16のキックが数多くの歓喜を呼んでいる。JリーグYBCルヴァンカップも含めた全試合に先発して、絶好調だ。

上写真=好調名古屋の絶好調男、マテウスが素晴らしい活躍を見せている(写真◎Getty Images)

蹴れば蹴るほど

 名古屋グランパスファミリーであれば、何度も何度もその瞬間を楽しんだことだろう。J1第12節でついに川崎フロンターレ戦を止める1-0の勝利を生み出した、金崎夢生のヘディングシュート! 前半終了間際の決勝ゴール!

 ご存知の通り、左サイドからここにボールを送り込んだのはマテウスだ。川崎Fのセンターバック、谷口彰悟の頭を越しながら、その向こう側でカバーに絞ってきた左サイドバックの車屋紳太郎の手前に落とすハイテクニックなピンポイントクロス。芸術品と言っていいだろう。

 今季は開幕から、そのアーティスティックなセンスを惜しみなく披露し続けている。最近で言えば、第11節の湘南ベルマーレ戦ではアディショナルタイムに右CKをニアに鋭く送り込み、オウンゴールを誘発して1-0の勝利をもぎ取った。第9節の浦和レッズ戦、9分の前田直輝の先制ゴールでは自分へのパスを巧みにスルーして金崎に渡し、ここからのクロスがゴールになったし、10分には金崎の縦パスでから左サイドに抜け出して、スピードも角度も最高のグラウンダーのセンタリングを送って前田の2点目をお膳立て。18分の3点目ではショートコーナーでガブリエル・シャビエルにボールを短く渡して、そこからのクロスをジョアン・シミッチがヘッドで押し込んでいる。

 さかのぼっていくとほかにも、第6節大分トリニータ戦の先制点ではマテウスの縦パスを金崎が落として吉田豊が決め、2点目はFKで丸山祐市のゴールをアシスト、第4節のセレッソ大阪戦の先制点でも右CKからオウンゴールを誘い、第3節のガンバ大阪戦ではこぼれ球を蹴り込んで自ら今季リーグ戦初ゴール、加えてガブリエル・シャビエルにボールを送ってもう1点を導いた。第2節の清水エスパルス戦でも右からのクロスをジョアン・シミッチがヘッド、こぼれ球を相馬勇紀が押し込み、逆転弾は前田の右からのセンタリングがオウンゴールとなったのだが、そのパスは中にいたマテウスを狙ったものだった。ベガルタ仙台との開幕戦で1-1に追いついたシーンも、右からの前田の折り返しをさり気なくスルーして阿部浩之の移籍後初ゴールをもたらした。そしてルヴァンカップでも2得点1アシストを記録している。

 公式戦25得点のうち、マテウス絡みは実に16点。その左足は、何かを起こすのだ。

「いろいろな面でチームに貢献できるのはうれしいことです。いい内容で90分、戦えていますし、それをやり続けられるように全力を尽くしたいと思っています。これからも集中力高めながらやっていきます」

 相変わらず真面目な姿勢がこのチームのカルチャーを代表しているが、左足の破壊力はもちろん自覚している。

「難しい試合が続く中でセットプレーは重要で、監督も速いボールを求めています。引き続きやっていきたい」

 確かに川崎F戦でも湘南戦でも浦和戦でも、スピードのこもった力感のあるクロスボールがゴールを生んでいる。「蹴れば蹴るほど、練習するほどキックの質は高まっていきます。セットプレーが多くなっていますが、練習からいいフィーリングで質を高められればいいと思っています」と胸を張るから、そのアートな左足がビッグチャンスを呼び込むシーンはまだまだ続きそうだ。

 一方で、そろそろ自らが歓喜の雄叫びを上げるシーンも見たい。今季のリーグ戦に限ってはいまのところ、上記のようにG大阪戦で挙げた1得点。

「そうですね、僕もそろそろ決めたいという思いは大きいです。チームは勝っていますし、そこに貢献している気持ちは大きくて、勝ち点3を取るためのパフォーマンスが第一です。その上で自分でも決められれば最高だと思います」