豪快なゴールを決めたトーマス・デン。GK西川も祝福に駆け寄る(写真◎J.LEAGUE)
■2020年8月23日 J1リーグ第12節(@埼玉:観衆4,435人)
浦和 1-2 神戸
得点:(浦)トーマス・デン
(神)小川慶治朗、山口蛍
「キャリアのベストゴールのひとつ」
拍手の音だけが響く、静かな埼玉スタジアムが大きくどよめいた。1点を追う33分、CKの相手クリアボールに反応したトーマス・デンが迷うことなく右足を振り抜くと、ボールは一直線にゴールへ。右ポストを直撃し、一瞬で左サイドネットへ吸い込まれる。距離にして約20mのミドルシュートだったものの、相手GKが一歩も動けなかった。いつもは控えめの本人も満足そうにJ1初ゴールを振り返った。
「とてもスペシャルなゴールでした。きょうはパーフェクトに打てました。僕のキャリアのなかでも、ベストゴールの一つに入ると思う。間違いなく僕のハイライトブックにはのりますね」
ただのまぐれ当たりではない。もともとキックには自信を持っており、オーストラリア時代にもロングシュートは決めているという。
「浦和に来てからチャンスがなかっただけです」
シュートもど派手ならゴールパフォーマンスは圧巻だった。ゴールネットを揺らした後、ハーウェーライン付近まで走ってきたかと思えば、勢いそのままに側転からバク宙の華麗なるコンビネーション技を披露。緑の芝生の上で宙を舞った高さは、驚がくのレベルと言っていい。まるでサッカースパイクを履いた体操選手のようだった。目を丸くして駆け寄ってくるチームメイトたちも興奮しながら祝福していた。
トミーの愛称で親しまれるナイスガイは仲間からの信頼もつかみ、いまやチームに欠かせない一人となっている。真夏の連戦でも4試合連続でフル出場。この日は守備で2失点を喫して、勝利に貢献することはできなかったが、センターバックを組む槙野智章とのコンビネーションも上々だ。「いい関係を築けている」と手応えはある。敗戦後も下を向かず、すぐに気持ちを切り替えていた。
現地取材◎杉園昌之 写真◎J.LEAGUE