FC東京は主力の海外移籍や負傷離脱で苦しみながらも、正しい道を見つけ始めたようだ。長谷川健太監督が繰り返し話す「アンカーシステムの安定」がそれだ。湘南ベルマーレ戦ではさらに基本に立ち返り、上昇気流をつかみにいく。

上写真=湘南戦は走りきれるかどうか。長谷川監督は選手に要求する(写真◎FC東京)

「あうんの呼吸が出てきている」

 明治安田生命J1リーグ第12節は湘南ベルマーレとのホームゲーム。湘南は前節、名古屋グランパスにアディショナルタイムにゴールを許して0-1で敗れ、FC東京も同じく90+6分に押し込まれて3-3とされ、サンフレッチェ広島から勝利を手にするチャンスをフイにした。ともに勝負の苦々しさを味わっただけに、それを払拭しようと相まみえることになる。

 特に湘南は5連敗中で、その分、一戦必勝の念も強いはず。だからこそ、長谷川健太監督がポイントに挙げるのはシンプルなことだ。

「侮れない印象です。昨シーズンの終盤で対戦したときにも最後の最後で追いついた試合でした。気持ちを前面に出して戦うチームですから、アグレッシブさで上回れるかが大事な試合。単純にどちらが走り切ることができるかになると思います」

 前節で広島に最後に追いつかれてしまったのは、痛恨だ。「割り切って勝ち切るために5バックにして戦ったわけですが、まだ若い選手が理解しきれていない部分があるかもしれない。同じことを繰り返さないようにしていきます」。失敗は糧にしなければ、永遠にただの失敗だ。「いまメンバーが入れ替わってきて、もう一度確認するにはいい機会にしていかなければいけないと思っています」

 橋本拳人、室屋成の海外移籍、東慶悟の負傷離脱でピッチに立つメンバーが変わったからの悔恨。しかし、セレッソ大阪、名古屋グランパス、広島とここ3試合はほぼ同じ顔ぶれで臨んで、1勝2分けと黒星はない。徐々にシュアなゲーム運びが戻ってきて、「守備が堅く、組織力のあるチームと対戦しながら、特に広島戦では3点を取れたのはポジティブな結果」と長谷川監督も実感している。

 ほかにも前向きなポイントはある。「アンカーシステムに手応えを感じながら、同じやり方で理解していくことで連係を深めて試合でもできるようになってきています。徐々にあうんの呼吸が出てきていると思います」。攻撃面では、ボールコントロールと意外性のあるパスを得意とする高萩洋次郎をアンカーに置き、その前でアルトゥール・シルバと安部柊斗がハードにディフェンスすることによって、高萩に時間と空間を提供する、というイメージだろうか。

 加えて「インサイドハーフが点を取ると攻撃に厚みが出てくる」と前節の安部のゴールを高く評価する。永井謙佑、ディエゴ・オリヴェイラ、レアンドロの高速3トップや、途中出場で威力を発揮しているアダイウトンの存在が目立つが、「2人のインサイドハーフ+アンカー」という逆三角形のミッドフィールドがこれからのFC東京にとって重要な意味を持ってくるのだろう。