サンフレッチェ広島MF川辺駿の今季初得点が、苦しむチームを救った。8月19日のFC東京戦、後半アディショナルタイムに同点ゴール。連敗を回避し、勝ち点1につながる貴重な働きを見せた。

上写真=後半アディショナルタイム、FC東京GK波多野が触れずに流れたボールから、川辺が起死回生の同点ゴールを決める(写真◎J.LEAGUE)

■2020年8月19日 J1リーグ第11節(@Eスタ:観衆2,033人)
広島 3-3 FC東京
得点:(広)野上結貴、荒木隼人、川辺駿
    (F)ディエゴ・オリヴェイラ、安部柊斗、レアンドロ

「安い失点が多かった」

 敗戦ムードが漂っていた。サンフレッチェ広島はFC東京に2-3とリードされ、5分と表示された後半アディショナルタイムに入ってからも、CKを与えてボールキープで時間を使われるなど反撃ムードが高まらない。
 
 だが、時計の針が95分を過ぎたところで起死回生の同点ゴールが生まれた。FWレアンドロ・ペレイラが右からのセンタリングを頭でフリックしてMF東峻希につなぎ、東のリターンから左足シュート。FC東京MF髙萩洋次郎に当たって不規則なバウンドになり、ファーサイドまで流れたボールをGK波多野豪が触ることができなかった先で、飛び込んだMF川辺駿が無人のゴールに流し込んだ。
 
 再開のキックオフ直後に試合終了となる、公式記録で90+6分に生まれた今季初得点。決めた後に副審を見てオフサイドではないことを確認したという川辺は「自分でも(オフサイドかどうか)分からなかった。こぼれてくるかな、と思って準備していたおかげ」と語り、「ボールに回転がかかっていて、ゴールががら空き。少し緊張したけど、うまく決めることができてよかった」とわずかに表情を崩した。

 開始直後からボールを支配し、14分に先制したまではよかったが、その後に前半だけで3失点と守備が乱れた。「安い失点が多かった。(FC東京は)個々の能力がありますが、それ以前に、自分たちがやらせてはいけない部分で、やらせてしまった」と反省点を挙げた川辺は、第2節以来となる3得点を奪ったことを踏まえて「失点が少なければ勝ち点3を取れた試合」と残念がる。
 
 ただ、最後の最後に引き分けに持ち込み、前節に続く連敗は回避。「追いかける展開で、最後に1でも十分に貴重な勝ち点なので、取れるように試合を進めていた」という川辺は、「ああいった形で追い付けたことは、チームにとってプラス。シーズンを通して見れば、より重要な勝ち点1だった」と前向きにコメントした。

現地取材◎石倉利英 写真◎J.LEAGUE