8月19日、明治安田生命J1リーグ第11節が開催された。ニッパツ三ツ沢球技場では横浜FCと鹿島アントラーズが対戦し、横浜FCが前半に記録した「ラッキーな」得点を守り切り、1-0で勝利。ホーム連勝を飾った。

上写真=前半に皆川が上げた1点を守り切り、横浜FCが鹿島を下した(写真◎J.LEAGUE)

■2020年8月19日 J1リーグ第11節(観衆2,773人/@ニッパツ)
横浜FC 1ー0 鹿島
得点:(横)皆川佑介

・横浜FCメンバー◎GK六反勇治、DFマギーニョ、伊野波雅彦、カルフィン・ヨン・ア・ピン、袴田裕太郎、MF松浦拓弥(87分:手塚康平)、佐藤謙介、瀬古樹、松尾佑介(74分:武田英二郎)、FW一美和成(74分:斉藤光毅)、皆川佑介(87分:小林友希)

・鹿島メンバー◎GK山田大樹、DF小泉慶(74分:荒木遼太郎)、奈良竜樹(74分:染野唯月)、町田浩樹、永戸勝也、MFレオ・シルバ(65分:永木亮太)、三竿健斗、ファン・アラーノ(65分:遠藤康)、和泉竜司、FW土居聖真、エヴェラウド(82分:松村優太)

体を張り続けた選手たちに感謝したい

 横浜FCは前節、湘南ベルマーレに勝ったメンバーに手を加えず、今季初の連勝をかけて鹿島戦に臨んだ。ルヴァンカップのサガン鳥栖戦で採用して以降、守備のバランスが良い4-4-2のフォーメーションが、前半はスムーズに機能した。行く時と留まる時の見極めができており、鹿島の攻撃を何度も寸断。ボールを握る時間は短かったものの、ボールを奪うや一気の攻めで鹿島ゴールに迫った。

 そして25分、ネットを揺らす。松尾のパスを受けた左サイドバックの袴田がボックス内左から中央へ短く折り返すと、一美が飛び込んで右足を合わせる。ボールをとらえきれなかったが、鹿島の選手に当たり、跳ね返った。そして次の瞬間、一美の左腕にボールが触れる。鹿島の選手たちは一斉に手を挙げてハンドをアピールしたものの、笛は吹かれずゲームは続行。密集に飛び込んだ松尾がボールを拾って中央にパスを出すと、フリーで待っていた皆川が冷静に決め、横浜FCが先制に成功した。

 後半は「プレスがかからなかったので後半は修正して臨んだ」(ザーゴ監督)鹿島に押し込まれ、ビルドアップもままならなかった。それでも途中からは1点を守ると割り切って、5バックとMF陣の献身で堅牢を築き、耐えに耐えてみせる。「鹿島の精度に助けられた部分もある」とはCBを務めた伊野波の言葉だが、90分間を戦い抜き、勝ち点3を手にすることに成功した。

「ホームで連勝できてうれしく思っています。90分間、最後まで体を張り続けた選手に感謝したい。もうちょっと自分たちで攻撃する時間を増やしたかったんですが、鹿島のプレッシャーの前に、自分たちの時間が作れなかった。それでも少しラッキーな形で得点できて、それを最後まで守り切り、今季初のクリーンシートに終われたことはうれしく思います」

 横浜FCは下平隆宏監督は試合をこう振り返った。そして、後半途中に戦い方を修正したことについても説明した。

「(後半は)ボールを握れと、リスクがありながらも攻撃に出ないと45分間を守り切るのは無理だと思っていたので選手に言いました。でもなかなか形が作れず、途中からは割り切って1点を守ろうと」

 試合中に、いったん理想を脇に置き、現実的に戦うことを決断した。求める戦いを貫徹できなかったことに関して指揮官は複雑な思いも口にしたが、「勝利が何よりの良薬」とも連敗中には語っていた。良薬で体勢を立て直しつつ道を進む方が、実は理想に近づく方法としては正しいのかもしれないーー。試合後、サポーターの拍手に応える選手たちの晴れやかな表情は、そんなことを思わせた。少なくともこの日は、理想と現実の折り合いがついていた。

 次節は中2日で臨む清水エスパルス戦。横浜FCはホーム連勝の勢いを駆って、日本平に乗り込む。

現地取材◎佐藤 景 写真◎J.LEAGUE