室屋成がドイツのハノファーに移籍したことで、FC東京のDF中村帆高に対する期待値はより大きくなっている。18日、オンラインで取材に応じた本人は、そのことを自覚し、覚悟を持って戦っていくと話した。

上写真=広島戦に向けて調整する中村帆高(写真提供◎FC東京)

起こること全部、良いことにつなげられる

 ドイツへ旅立った室屋成から、あとを託された。かけられたのは「頼んだぞ」という短い言葉。ただその重みを、中村はしっかり受け止めていた。

 同じサイドバックとしてポジションを譲られたというわけではない。室屋はサポーターに向けたあいさつの中でこう言っている。

「一つ移籍を決断した理由に、若い選手の台頭というものがあります。そういった選手たちがFC東京に出続ける限り、このチームは偉大なチームであり続けると思いますし、いつかそういった選手たちが、このチームにタイトルをもたらしてくれると自分も信じています」

 悲願のリーグ制覇ーー。託されたものは大きい。中村は言う。

「成くんの存在の大きさは同じポジションでもあった自分が一番、分かっています。そういう意味ではもう少しの間でも、近くで学びたかった。でも移籍した今、そういうことを吐いていられない。これからは、今は想像できないような試練もあると思いますが、どんなことにも目を背けずやっていきたいと思っています」

 言葉には覚悟がにじむ。

「こういう形(=主力の移籍)で回ってきたチャンスではありますが、サッカー選手はピッチに立って、実戦で一番、経験が積める。これから、いろいろな壁があると思いますし、周りにもいろいろ言われると思います。厳しい道を行くことになりますけど、そこで縮こまってやるのではなく、起こることは全部、最終的には良いことにつなげられると思うので、常に向き合って成長していければいいと思っています」

 今季10節までに6試合に出場。うち先発は4試合。3節の川崎フロンターレ戦では不甲斐ない内容で前半だけで交代し、続く4節の横浜F・マリノス戦ではアグレッシブなプレーで先発フル出場を果たして勝利に貢献した。この短期間にも壁にぶつかり、それを乗り越える作業を繰り返して来た。プロの厳しさを痛感し、自身の強みを見つめ直し、再び挑み、戦うそんな日々。覚悟する中村は、室屋の移籍を機に、成長速度を速める必要性も感じている。

 明日のサンフレッチェ広島戦。出番を得たら、チームの勝利のために力を尽くすと誓う。

「相手は3ー4ー3という形で(ポジションの)中間に立ってくるのがうまい選手がいて、両サイドからのクロスもあるので押し込まれる時間はあるとは思います。ただ、この2試合でできている全員守備・全員攻撃をしっかりやれれば。まずは良い守備から入ることができれば、良い結果が出ると思っています」

 代表クラスの選手が移籍したのだから、チームに影響がないわけはない。ただ、室屋があとを託せる若い選手が今のFC東京には、いる。室屋と、ファン・サポーターと、多くの人たちの期待を引き受けて、中村帆高は明日、試合に臨む。