すでにプライムステージ進出を決めた柏レイソルが臨んだ、JリーグYBCルヴァンカップのグループステージ最終戦。大分トリニータを相手に前半の不調をひっくり返したのは、後半から入った18歳・細谷真大の力によるものだった。

上写真=先制点となるプロ初ゴールを挙げてこの雄叫び! 細谷は1得点1アシストの活躍だった(写真◎J.LEAGUE)

■2020年8月12日 YBCルヴァンカップDグループ第3節(@三協F柏:観衆1,969人)
柏 3-1 大分
得点:(柏)細谷真大、北爪健吾2
   (大)渡大生

「シュート!」の声が聞こえた

 試合を一気に動かす大仕事をやってのけた。

 大分トリニータにペースを持っていかれたまま進んだ前半を終えて、ネルシーニョ監督は2人の交代を決断した。1人はセンターバックの高橋祐治に代えて古賀太陽、もう1人、トップ下の山田雄士に代わって入ったのが、細谷真大である。

 交代からわずか10分で、その時を迎える。

 56分、戸嶋祥郎からの縦パスを受ける。「前を向いてスペースがあったので、運んで運んでゴール前まで行けました」とドリブルで突き進んだ。それでもまだ、相手の寄せは甘い。「パスかシュートかで迷ったんですけど、ベンチからシュート! という声が聞こえたので、いってやろうと」決断すると、「全然相手のDFは見ていませんでした。ゴールしか見ていなかったです」と右足を振り抜いた。「打ったらDFに当たったけど、うまく入ってよかったです」「気持ちで押し込んだという感じです」。コースが変わってGKに止められることなく吸い込まれ、プロ初ゴールが生まれた。

 この先制弾からわずか2分後、今度はパスできらめく。ショートパスの連続で中央を真っ二つに割る鮮やかな攻撃で、最後は三原雅俊からの縦パスをヒールで流して北爪健吾に送り届けるおしゃれアシスト。「いつもはあんなことしないんですけど、たまたま右足にボールが来ちゃってあれしかできなくて」と笑わせた。

 70分には北爪がこの日2点目を決めて3-0とし、アディショナルタイムに1点を許したものの、3-1の快勝。ゲームの流れを追っていけば、完全にリズムをひっくり返した細谷の1得点1アシストこそが「大仕事」なのだが、ネルシーニョ監督が称えたのは、その前に見せた攻守の働きだった。

 与えたタスクは二つ。前半に大分の攻撃のスタート地点になっていた、柏から見て3バックの左に入った高山薫を厳しくチェックすること。そして、相手に捕まらない場所でボールを引き出し、あるいは裏に抜け出すことで相手のラインを押し下げて、こちらが利用できるスペースを作ること。

 ネルシーニョ監督はこう評価した。

「後半、技術とパワーのある細谷を起用しましたが、こちらの要求を理解して入ってくれました。相手のライン間でうまく駆け引きしながら、相手守備のオーガナイズに歪みを生んでほしい、背後に飛び出してラインを下げてギャップを作ってほしい、と伝えて、そのサイクルが生まれていました」

「これで相手の組織的な守備にギャップができて、そこを突いて支配できるようになりました」

 細谷本人は「1点目は自分の特徴が出ました。前に出る推進力が得意なところなので、得点につながってよかった」と素晴らしい夜を振り返った。ただ、ゴールそのものではなくその前の働きによって、厳格なネルシーニョ監督からこれだけの褒め言葉を引き出したことこそが、もしかしたらこの日の最大の「大仕事」だったのかもしれない。

取材◎平澤大輔 写真◎J.LEAGUE