JリーグYBCルヴァンカップのグループステージは、8月12日の第3節が最終戦。すでに柏レイソルはプライムステージへの進出を決めているが、この大分トリニータ戦を選手たちがどう戦うかが、未来を変えていくだろう。

上写真=ネルシーニョ監督は消化試合だからといって気を緩めるわけはない(写真◎Getty Images)

「トレーニングマッチではありません」

 JリーグYBCルヴァンカップではすでにプライムステージへの進出を決めた柏レイソル。8月12日の第3節・大分トリニータ戦はいわゆる消化試合となるのだが、「これはトレーニングマッチではない」と周囲を戒めるのが、柏レイソルの御大、ネルシーニョ監督である。

「確かにレイソルはすでに次のステージへの進出を決めてはいますが、まずはもう1試合をいい形で終えることが大事になってきます。この大分戦は出場機会に恵まれなかった若手にその場を与えることで、公式戦のゲームに慣れていってもらって、チーム力の底上げにつなげるものです」

 今季は特に、超連戦でこれからのコンディション調整が非常に難しくなるし、負傷者が出てくることも想定しながら戦っていく慎重さも求められる。そうした緊急事態に対応できる柔軟なチームであるためには、1試合とも無駄にはできないという思いだ。もちろん、相手チームへのリスペクトもある。

 起用された若手がどんなプレーを見せるか。ネルシーニョ監督にとってもそれは楽しみだろう。その視線は次の90分で選手の何を見定めていくのだろうか。

「しっかりと局面局面で判断できているか。戦う姿勢で臨めているか。戦術プランを遂行できるか。それを求めたいと思います」

 ネルシーニョ監督が定める3つの掟と言ってもいいだろう。判断には情報収集の能力と冷静な思考が必要だし、戦うためには目の前の相手にひるまない熱くて冷たい闘争心が必須で、戦術の実行には幅広い理解力とサッカーIQが求められる。タスクは簡単ではない。

「次のステージに進出が決まっても、勝ち点3のかかった公式戦です。トレーニングマッチではありません。そのことを選手たちもしっかり分かった上でピッチに入ってほしいと思います。実戦での経験、結果を残すことでもたらされる自信が、いろいろなことが起こるであろう今後の戦いで、例えばケガ人が出たときに代わりにしっかりと入っていけるかどうか、この試合を踏み台にして頑張ってほしいと思います」

 この言葉を聞くだけで背筋がぴんと伸びる選手もいるだろう。

 目の前に好例がある。ルヴァンカップ第2節、湘南ベルマーレ戦で今季公式戦初先発を果たした川口尚紀が、その次のリーグ戦の横浜F・マリノス戦で途中出場を果たした。ケガ人が出たことで、本来の右サイドバックではなくセンターバックでのプレーだった。川口本人は初めての経験に驚きを隠さなかったが、ネルシーニョ監督は高く評価している。

「彼のセンターバックとしての適性を精査してきた中で、守備的な感覚はいいものを持っているし、空中戦も対等に競り合えて、スピードもあって、予測の部分でも背後へのカバーリングでいいものを持っています。攻撃に出ていくパスもいいタイミングで味方につけることができます。試合前に、状況によってはセンターバックで起用すると話していて、残念ながらケガ人が出たので、センターバックとしてプレーすることになりましたが、実際にしっかりと与えられた役割を忠実にやってくれたと思います」

 やはり、この歴戦の将は選手の本当に細かいところまで見抜いているのだ。