太田宏介が帰ってきた。2月12日に右脛骨疲労骨折で手術に踏み切ってから約5カ月半。明治安田生命J1リーグ第8節の柏レイソル戦で交代出場した。0-1で敗れて喜びも半減だったが、ここからの巻き返しを明るく誓うのだった。

上写真=柏戦で太田宏介が帰ってきた! ここから巻き返す(写真◎J.LEAGUE)

ルーキーの気持ちでやってます!

 元気いっぱいの33歳が帰ってきた。太田宏介がJ1第8節の柏レイソル戦で78分にピッチに入ると、豊田スタジアムに集まった4,678人の盛大な拍手で迎えられた。

「去年の最終戦以来になるので、すごく楽しみな気持ちでいっぱいでした。ケガした箇所は問題なく、やっとスタートラインに立てたという印象ですね」と一安心。「リハビリの間にJリーグも中断していたので、試合はたくさん残っています。僕もまだ33歳の若手なので、元気良く明るく盛り上げて貢献できればと思っています!」と意欲は満々だ。

 すっかりベテランとしての風格も身につくキャリアだが、本人は実は不服。「ベテラン扱いされること増えてきたんですけど、まだフレッシュに、ルーキーの気持ちでやってますし、みんなと同じところで競争しているので、自分がとにかく引っ張っていっている感覚はないです。みんなに負けないように必死に頑張っている感じですね」とうそぶいてみせる。「僕も調子乗り世代なんでね、エネルギッシュな選手が多いのでまだまだサッカー界をピッチで盛り上げていきますよ」と、パワー満タンなところを猛アピールしている。

 この明るさはチームを救うだろう。複数の選手やスタッフに新型コロナウイルス感染者が出て、現在は負傷者も続出している。リーグ戦でも柏に初黒星を食らって、つい下を向きがちな状況かもしれない。だからこそ、自らを「まったくストレスを感じないハッピーな人間」と評するこの男がこのタイミングでピッチに戻ってきたのには、大きな意味があるのではないかと思ってしまう。

 もちろん、ただ明るいだけではなく、プレーで貢献するイメージはできている。

「再開してからいい内容と結果がついてきて、こういうときは自然と結束していい雰囲気になるものですけど、負けたあとの試合は大事ですね」と冷静に現状分析。その上で、「次のルヴァンカップで出るチャンスがあったら、チームとしてやるべきことをやった上で、長所を出していければと思っています。いまはセットプレーからのチャンスがあった割にはゴールになっていないので、そこは他の選手と違う長所を出していきたい」

 つまりは、得意中の得意のセットプレーのキッカーとして勇躍する自分の姿だ。

「(セットプレーは)チャンスしかないですね。いままで練習ではサブ組でやってましたけど、(レギュラー組の選手たちの)中に入ってくる勢いとか個人の強さは他のチームよりありますよ。自分がキッカーになったら、そういう選手の強さを引き出せるいいキックを出したいですね」

 対峙してみて初めて分かるすごみがある。それが、次のキックへの糧になっていくのだ。

 マッシモ・フィッカデンティ監督は8月5日のルヴァンカップ、清水エスパルス戦について、多くの負傷者を抱えているためにメンバーを組むだけでも大きな苦労があることを明かした。だが、もちろん勝つために戦う。苦しいアウェーゲームで勝利をもぎ取るためには? そう、セットプレーが物を言うだろう。

「毎日サッカーができることが本当に幸せ」と語る太田の表情は、マスク越しにも関わらず満面の笑みであることが伝わってくる。「連戦ではセットプレーが重要なキーになってきます。どんな内容の試合でもセットプレー一発で勝ちきれるようになれれば」。チームに足りない貴重なピースを、ルーキーもどき(?)のキッカーが握っているのは間違いない。