浦和レッズ戦では中村俊輔が右インサイドMFで開幕戦以来の先発を果たし、左インサイドに手塚康平、そしてアンカーを佐藤謙介が務めた。ボールを保持し、ゲームを作る逆三角形は敗戦の中で見えた光明かもしれない。

上写真=中盤の底でバランス取り、ゲームを作った佐藤(写真◎J.LEAGUE)

■2020年7月26日 J1リーグ第7節(@ニッパ球/観衆2,580人)
横浜FC 0-2 浦和
得点:(浦)レオナルド、エヴェルトン

前半はコントロールする狙いを実現

「ゲームを落ち着いてコントロールする」狙いを持って、下平隆宏監督は中村俊輔の名を先発リストに書き込んだ。開幕戦以来、今季2度目の先発。中村は中盤で構成された逆三角形の右の頂点に入った。左の頂点は手塚康平、そしてその二人の背後、つまりは逆三角形の頂点を務めたのが佐藤謙介だった。

 いずれもボールを持つことを得意とし、ゲームを作ることを役割としてきた選手たちだ。特長が重なる部分もあるが、指揮官は起用の意図を次の通り、説明した。

「俊輔を入れて、3人ともゲームを作れるメンバーで、しっかりコントロールした中で自分たちの時間を長くするという狙いを考えていました」

 実際、前半の出来は悪くなかった。ボール支配率は五分五分であり、もっと圧倒することが理想だったかもしれないが、ピッチ中央の逆三角形は形を変えながら攻撃を展開し、相手ゴールへの道を切り開いた。手塚が斉藤光毅や松尾佑介と積極的に絡んで左サイドを攻略し、中村はマギーニョの攻め上がりを促しつつ、周囲とパス交換しながら右の攻撃を活性化。佐藤はそんな二人を支え、ボールを配球しながらチームを機能させた。佐藤が言う。

「ボールを動かすとか、相手のゴール前まで行くということに関しては3人でバランスを取っていけたと思います。でも結果として、ノーゴールに終わっている。もっと相手のゴール前での精度だったり、圧力をチームとして増やしていかなければいけないかなと思います」

 ゲームをコントロールできた45分を終えると、中村に代えてエリア進入率を上げるべく松浦拓弥を投入した。その交代があらかじめ用意していたプランであったことを指揮官は明かしたが、前半のバランスが悪くなかっただけに、もう少し『ボールを持ててゲームを作れる3人』の共演時間を延長する手もあったかもしれない。

 チームは52分に失点し、そこからの反攻は実らずに3連敗を喫することになった。

「本当に最後の局面だけだと思います。そこがJ1とJ2の違いだと思いますけど、うちが勝っていくためには、最後の局面をどう打開するか。決め切るところを決め切る力をこれから身につけていかないといけないと思う」(佐藤)

 プレス回避のためにロングーボールを蹴ることも厭わない浦和に対してハイプレスをかけ続ける必要はなく、それゆえに今回の逆三角形がスタートから実現した面はあっただろう。作り手をそろえた中盤は強度と機動力という点で不安も残るが、ボールを保持してゲームをコントロールしつつ、攻撃にバリエーションを生み出してみせた。チームにとって、今後も有効な手段となり得るのではないか。

 現在の横浜FCは「自分たちの時間を長くする」ことが大きなテーマだ。その時間が長くなれば、比例してゴールチャンスも増えていく。相手のスタイルの違いもあるが、川崎フロンターレ戦、横浜F・マリノス戦よりも浦和戦ではその時間が長くなった。中盤の『持てる逆三角形』が、それを実現した。敗戦の中で見えた光明だろう。