柏レイソルが4ゴールを奪ってアウェーで浦和レッズに圧勝したJ1第6節。驚きのスコアだが、情熱的なランニングとシュートで勝利の礎となったのが神谷優太だ。長髪を振り乱して駆けるアタッカーは、野心のカタマリだった。

上写真=神谷は90分、はつらつとピッチを走り回る姿に好感(写真◎J.LEAGUE)

■2020年7月22日 J1リーグ第6節(@埼玉:観衆4,127人)
浦和 0-4 柏
得点:(柏)ヒシャルジソン、オルンガ、仲間隼斗、神谷優太

「いいプレゼントを贈ることができました」

 芯を食う、とはああいうシュートのことを言うのだろう。柏レイソルが埼玉スタジアムに乗り込んで浦和レッズと対戦したJ1第6節。3-0でリードして試合も終盤、89分というタイミングは、柏としてはあとはどうやって試合をクローズさせるか、という時間帯だった。

 中盤で三原雅俊が相手のタックルを受けてボールをこぼしてしまう。しかし、近くでサポートしていた神谷優太はこれをさっと拾うと、そのままゴールにまっしぐら。ペナルティー・エリア手前のおよそ45度の角度から右足の甲をボールの中心にぶつけるように足を振ると、パワーの乗ったボールはDFの足に当たってややホップするようにゴール左に飛び込んでいった。名手・西川周作もほとんど足を動かせないまま、その軌道を見送るだけだった。

 愛媛FCで2年、主力として思い切りピッチを駆け回り、2020年に柏に加入。当初はベンチメンバーの一人だったが、アグレッシブな姿勢がチームを活性化させて、4節の川崎フロンターレ戦から先発の座を奪い取った。そしてこの移籍後初ゴール。ドリブルで進んでいくときに顔を上げると、山田雄士とオルンガもゴールに迫って走っていったのは見えていた。しかし、自らシュートを打ち切った。

「最初に持ったときに2人がいるのは分かっていました。でも、そっちにDFがいたので仕掛けるべきだと思いました。思い切って足を振っていくことが大事だと思って、シュートを選択させてもらいました」

 3-0というスコア、89分という時間、ダッシュする味方と守る相手、条件を十分に検討した上での冷静なショットだった。

 試合をほぼ決定づける56分の3点目もアシストしている。左からの三丸拡のクロスをファーでヘッドで折り返すと、仲間隼斗もヘッドで流し込んだ。「正直なところ、あのシーンは練習でもなかなかなくて。最初はヘッドで打とうと思ったんですけど、クロスが高くて、瞬時に隼斗くんが見えたので落としました。普段からコミュニケーションを取っているから、こういういい場面が出てくるのかな」と笑った。「監督の70歳の誕生日だったので、いい勝利、いいプレゼントを贈ることができました」とリップサービスも心憎い。

「僕は愛媛に行ったことがプラスでした。チームへの責任感やゲームの流れを自分で変える気持ちを成長させてもらいました」と、J2での経験が心を強くしたと振り返る。だからこそ競争に勝ち抜いてポジションを奪ったのだ。そして、仲間も、呉屋大翔や戸嶋祥郎も昨年まではJ2で戦って、今季から柏に加わったメンバー。

「J2から来て野心を持っている選手ばかり。相手には脅威になると思います」

 そんな野心家集団を遠慮なく引っ張っていく責任感が、神谷にはある。

取材◎平澤大輔 写真◎J.LEAGUE