名古屋グランパスが着々と勝ち点を積み上げているが、好調の要因の一つがバリエーション豊かな攻撃だろう。その一角を担うのがマテウスだ。高速ドリブルと意外性のあるプレーで気持ちよさそうに赤鯱を引っ張っている。

上写真=鋭いドリブルが目を奪う。マテウスが好調だ(写真◎J.LEAGUE)

59分のコンビネーション

 名古屋グランパスの好調を紐解いていくと、大きな魅力になっているのが攻撃を司る選手たちのカラフルな個性だ。

 1-0で勝利を収めたJ1第5節のサガン鳥栖戦では、前方にマテウス、阿部浩之、相馬勇紀、山崎凌吾を配置し、前田直輝、ガブリエル・シャビエルが途中出場、この試合は契約の問題で出場できなかった金崎夢生もいて、ボランチの米本拓司や稲垣祥、途中出場のジョアン・シミッチの攻撃力が彼らをサポートし、サイドバックの成瀬竣平、吉田豊のオーバーラップも飛び出してくる。しかも、センターバックの丸山祐市と中谷進之介も常に崩しのパスを狙っているとあって、リアルに「どこからでも狙えるチーム」なのである。

「攻撃面の選手がクオリティーが高いと思います。前に絡む選手がたくさんいる中で、どのメンバーが出てもいいプレーを見せてくれるという期待が高いんです。そこがストロングポイントですね。前線でいいコンビネーションができているので、このままやり続けていきたい」

 ピッチの中でマテウスもそう実感しているのだから、見ている方も楽しいに決まっている。

 例えば、鳥栖戦では59分にこんなシーンがあった。最終ラインで丸山、米本、吉田の3人でボールを回してプレスを剥がしながら時間を作ると、吉田が中盤の前田に鋭い縦パスを差し込む。前を向いた前田は左のマテウスに預けてそのままゴール前へ猛ダッシュ、マテウスもゴールに向かって勝負…を仕掛けた瞬間に、すぐ横に走り込んできた前田にラストパス、前田がダイレクトで強烈な左足ショットを見舞ったのだ。残念ながらボールはバーを叩いてしまうのだが、マテウスはこのシーンを「いいコンビネーション」の例に挙げている。

〈59分のチャンスシーン〉

「(前田)直輝はスピードがあってコンビが生まれやすいので、近くでプレーするように意識しています。自分が中には入れば直輝がサイドをカバーしてくれるというように、やりやすいんです。他の選手についても、クオリティーを見ながら判断していきます」

「自分が中に入ったときには、いい形でやりきるという意識が高いですね。そこでいいポジションを取っている選手にアシストできればいいし、自分でシュートするのも好きです。鳥栖戦で直輝がバーに当てたシュートの場面でも、自分で左足に持ち込んでシュートという可能性もありましたけど、パスを選択しました。チームがいい形でやりきるようにプレーしたいんです」

 そんな色とりどりの攻撃パターンを引き締めるのが、フィッカデンティ監督の代名詞とも言える、堅守のリアリズムかもしれない。

「攻撃に関して特徴を出しながらも、ディフェンスのことを考えながら失点しない意識が高いと思います。勝ち続けるために、攻撃も守備も100パーセントでやっていきたいです」

「まずディフェンスを意識する中で、奪ったら空いているスペースを使おうという考えで守っています。鳥栖戦でもそういうカウンターがあって、もっとゴールに向かった走りやドリブルをしていくべきかなとも思います。相手のミスを待ちながら自分たちの守備を固めて強くして、奪ったらカウンターを仕掛けてしっかり決めたいと思います」

 次節はアウェーで大分トリニータと戦う。マテウスとその仲間たちが、攻撃の進化に向けた次の一歩を踏み出す90分になるかもしれない。