浦和レッズがFC東京に味の素スタジアムで敗れるのは2004年の9月以来だった。相性のいいはずの相手に完封負けを喫した。そんな悔しい敗戦の中でも、柴戸海は好パフォーマンスを発揮していた一人だった。

上写真=攻守両面で好プレーを見せた柴戸(写真◎J.LEAGUE)

■2020年7月18日 J1リーグ第5節(@味スタ:観衆4,705人)
FC東京 2-0 浦和
得点:(東)ディエゴ・オリヴェイラ、アダイウト

新境地を見せたワンタッチパス

 浦和レッズで最も働く男のプレーは、決して派手ではない。むしろ、いぶし銀と言っていい。0-2で負けていなければ、柴戸海のパフォーマンスはもっと評価されたはずだ。中盤で相手から何度もボールを奪取し、球際の強さを発揮。寄せの速さは際立った。

「相手の顔が少しでも下がれば、ボールは奪える。自信が出てきました」

 試合前に話していた通りのプレーをFC東京戦でも披露。この日は攻撃面でも存在感を示す。前半はワンタッチパスで相手の背後を突き、何度もチャンスをつくった。裏へのパスは課題のひとつだった。試合映像を見返すたびに「あの場面で、裏に出せていれば」と思うことがあったという。

 そして、この日は積極的にチャレンジしていた。ゴールにこそつながらなかったものの、41分の汰木康也に出したパスは圧巻。ダイレクトで軽くはたき、巧みにスペースへ。これまでの柴戸が試合でほとんど見せてこなかったパスだろう。前節の鹿島アントラーズ戦の後に自らに言い聞かせていた。

「裏のスペースは見えていても、出せないこともありました。ポジティブなミスはいいと思っているので、出していきたい」

 まさに練習で取り組んできた成果である。攻守両面で随所に好プレーを見せた。

 後半途中からはボランチから右サイドバックへ。マルチな役割をこなし、最後までチームの歯車として働いた。ただ、今季初黒星を喫し、本人は苦い顔で試合を振り返っていた。

「失点の場面も自分たちのミス。防げる失点でした。勝負が決まる時間帯で失点したのは痛かったです」

 柴戸は大卒3年目の24歳。まだ大きな可能性を秘めている。浦和の積年の課題である世代交代が一気に進んでいくかもしれない。

現地取材◎杉園昌之 写真◎J.LEAGUE