7月8日、明治安田生命J1リーグ第3節で湘南ベルマーレは横浜F・マリノスと対戦した。先制しながら敗れたが、先制点のMF中川寛斗は、スタイルを取り戻したチームに手応えを得ている様子だった。

上写真=湘南での初ゴールを決めたMF中川(写真◎J.LEAGUE)

■2020年7月8日 J1リーグ第3節(@ニッパツ)
横浜FM 3-2湘南
得点:(横)天野純2、オナイウ阿道
    (湘)中川寛斗、鈴木冬一

スタンドから見えたもの

 後半に入って7分後、アウェーの湘南が試合を動かした。右サイドからのクロスを山田直輝が折り返すと、逆サイドにいたのは中川寛斗。「先制点は僕の得意な形。折り返しで僕に相手がついてこられないところで、先に触れた。山田君には感謝しています」。小柄なアタッカーは、クールに語った。

 今季初の公式戦だったルヴァン杯の大分戦では先発したが、リーグ開幕戦はベンチスタートとなり、再開初戦となった前節・仙台戦はメンバー外だった。「仙台戦の様子をスタンドから見て、湘南らしさをもうちょっと出せると思った。それを体現しようと思った」。その思いを体で表現した。

 2トップの一角に入り、懸命に前線から相手ボール保持者にチェイシングを仕掛けた。最前線の中川に仲間も続き、ボールを動かす昨季王者に激しく寄せて、ボールを奪えばすぐさまベクトルを前へと向ける。ポゼッションサッカーを得意とする横浜FMにかわされる危険を指摘されても、中川は「リスクを恐れず前から行ってショートカウンターにつなげることが湘南スタイルだと思っている。そこは継続しつつ、外されることも90分間で何度かある。でも、最後で体を張るのも湘南スタイルだと思っている」。一度スタンドから俯瞰し、取り戻すべきイメージは頭にあった。

 結果は敗戦である。昨季王者を相手に健闘したとも言えるが、「相手がたまたまマリノスだっただけ。どこが相手でも、このスタイルでできるのが強み」。中川には、確かな手応えが残ったようだ。

 昨季に2度目の期限付き移籍で加わり、今季から完全移籍へと移行した。実はこの日の得点は、4シーズン目となる湘南で初めて決めたゴールだった。「スタイルを貫いて、1つでも上を、首位を目指してやっていきたい」。あくまで真っ直ぐ前だけを見て、力強く進んでいくつもりだ。

取材◎杉山 孝 写真◎J.LEAGUE