川崎フロンターレのDF山根視来が6日、練習後にオンラインで取材に応じ、鹿島戦を振り返り、8日のFC東京戦への意気込みを語った。チームの懸案事項を解決し得る右サイドバックは日増しにその存在感を高めている。

上写真=右サイドバックで鹿島戦に先発フル出場した山根(写真◎小山真司)

僕じゃなくてもいいのかなと思う

 2018年シーズンをもって退団したエウシーニョ(現清水)の後釜探しは、昨シーズンの川崎フロンターレに課せられた大きなテーマだった。馬渡和彰(現湘南)、マギーニョ(現横浜FC)と新戦力を試したが、なかなかフィットせず、本来、右サイドバックが本職ではない守田英正や車屋紳太郎、登里享平らも代わる代わる同ポジションを務めることになった。

 最適解を見いだせずに迎えた2020年シーズン。開幕戦、そして約4カ月の中断を経て行なわれた再開マッチの鹿島戦では、湘南ベルマーレから加わった山根視来が右サイドバックに入った。

 山根はチームの2点目となる長谷川竜也の得点を間接的にアシストしている。ワイドに構える右ウイングの家長昭博にボールを預けてインナーラップ。相手守備者を自身にひきつけ、家長がボックス内に陣取る長谷川竜也へ正確なボールを届ける時間とスペースをつくり出した。

 複数人が連動して生み出されたそのゴールは、チームが狙いとするところだ。すなわち山根は見事に攻撃を機能させたわけだが、本人からすると鹿島戦の出来映えでは「まだまだ」となる。

「連係面は、日に日に上がっていていますし、試合をやるたびにやりやすくなっているんですけど、そこにばかり意識が行き過ぎてしまった。もっと相手の怖いところに入っていきたいというのがあるので。周りと協力してボールを動かして、というのもできるし、もっと自分の走力を生かして相手が『嫌だな』と思うところに入っていくというプレーも、どっちもやっていきたいと思います」

 チームにおける自身の現状を問われても、「以前よりも周囲と関わるという部分でタイミングは取りやすくはなってきているんですけど、そこからチャンスにつながったり、見てる人の印象に残るようなプレーができているかというと、自分の中ではそうではない。ただ川崎に馴染んでいるだけでは、僕じゃなくてもいいのかなと思うこともある。しっかり特長を出さなければいけないと思っています」と厳しい。

 フロンターレで試合に出るなら周囲と連動するのは当たり前。重要なのは、その上で自分の個性をいかに発揮してみせるか。その点が物足りないと本人は言う。

 とはいえ、その存在感がチーム内で大きくなっているのは確かだろう。ここまでリーグ戦の2試合に先発出場。ハードな日程の中、中3日で臨む多摩川クラシコに先発するかどうか定かではないものの、「盛り上がる試合だと思っていましたし、(FC東京は)絶対負けてはいけない相手だと思っています。自分はDFなので、いい選手がいっぱいいますが自分のところで絶対やらせない」と、主軸を担う覚悟を示す。

 少なくとも鹿島戦は及第点以上のプレーぶり。『川崎Fの右サイドバックの最適解は山根視来である』。周囲が、そして自らも、そう認める日が、すぐそこまで来ているのかもしれない。