上写真=先制点を挙げた谷口(写真◎小山真司)
■2020年7月4日 J1リーグ第2節(@等々力)
川崎F 2-1 鹿島
得点:(川)谷口彰悟、長谷川竜也
(鹿)OG
・川崎Fメンバー◎GKチョン・ソンリョン、DF山根視来、ジェジエウ、谷口彰悟、登里享平(83分:車屋紳太郎)、MF田中碧、脇坂泰斗(62分:旗手怜央)、大島僚太(83分:下田北斗)、FW家長昭博(74分:守田英正)、レアンドロ・ダミアン、長谷川竜也(74分:齋藤学)
・鹿島メンバー◎GKクォン・スンテ、DF内田篤人(60分:広瀬陸斗)、犬飼智也、町田浩樹、永戸勝也、MF三竿健斗、レオ・シルバ(72分:永木亮太)、土居聖真(60分:伊藤翔)、和泉竜司(72分:染野唯月)、FWエヴェラウド、ファン・アラーノ(67分:遠藤康)
前半は川崎F、後半は鹿島の時間
前半、川崎Fは4ー3-3のフォーメーションで中盤の逆三角形を構成するアンカーの田中、左のインサイドMFの大島、右のインサイドMFの脇坂がチームをうまく機能させた。攻撃時には2人のインサイドMFが前線を手厚くサポートし、守備時は3トップの両翼とインサイドMFの一方が下がって分厚く守る(時に両インサイドMFと3トップの一方の翼が下がるケースもある)。サイドバックの攻め上がりも促し、立ち上がりからしばらくは川崎Fの時間だった。
先制したのも、川崎Fだ。開始2分。左のショートコーナーから家長がボックス内に浮き球パスを送ると、ゴール前でフリーになった谷口が右足を合わせてネットを揺らした。鹿島側はオフサイドをアピールしたが判定は覆らず、ゴールが認められる。
次の得点もまた、川崎F。右サイドから家長がクロスを入れると、ジャンプした鹿島の右サイドバック・内田を越えてボックス内に構える長谷川にピタリ。長谷川は勢いよく左足を振り抜き、ゴールを射抜いてみせた。これで2-0。ここまでかかった時間は開始から30分。戦前、先制点がポイントになると川崎Fの田中は話していたが、先制した上に加点し、ホームチームが前半のうちに勝利をグッと引き寄せた。
それぞれが状況に応じた役割を理解し、前半、とくに30分までは川崎Fが目指すアグレッシブなサッカーが実践された。その勢いのまま、押し切るかと思われたが、鹿島もオウンゴール(OG)をきっかけに冷静さを取り戻していく。不覚をとって長谷川に2点目を献上した直後の32分。鹿島のCKの場面でファン・アラーノが右足で蹴ったボールが、川崎Fのレアンドロ・ダミアンの頭を経由してゴールインに吸い込まれた。記録上はOGだが、そもそもカーブをかけたボールの質で、勝負ありだった。
後半も、鹿島は中断期間に取り組んできたスタイルをピッチにしっかりと描いていく。相手の間、大外のスペースにポジションを取った選手たちがしっかりボールをつなぎ、川崎Fを何度も押し込んだ。試合後、ザーゴ監督もその点を評価した。
ただ、川崎Fも最後のところはやらせず、集中した守備で鹿島の攻撃を跳ね返す。この日がデビュー戦となった途中出場の染野にクロバーを叩くシュートを許したが、それでもゴールは許さなかった。結果、前半に刻んだスコアのまま試合は終了。
新フォーメーションの運用を試みる川崎Fは前半に、一方、新スタイルの構築を図る鹿島は後半に、それぞれ意図した戦いを実践した。両指揮官はこう試合を振り返った。
「幸先よく2点取れましたけど、失点して相手の力を出させてしまった。後半3点目を取りに行きたかったが、いい形にならず、厳しい時間が続いたのは反省。ただ、しっかり耐えられて跳ね返せたことは今後のプラスになると思います」
苦しみながら再開初戦で勝利を手にした鬼木監督は、収穫と課題について語り、勝ち点3を手にできたことに安堵の表情をみせた。
「明らかなオフサイドがありながらそれを取ってもらえず、早い時間に失点した。再開初戦ということもあり、過度な緊張を強いられることになった。それでも前半の最後の方にはわれわれのペースになり、後半も良いプレーをしたと思う。まだ映像を確認していないですが、PKを取ってもいいようなプレーもありました。要は2回、第三者に試合の流れを変えられてしまって、そこは非常に残念」
ザーゴ監督は手応えを感じつつ、不運を嘆いた。
注目されたこの試合の価値を知るだけに、鬼木監督は安堵し、ザーゴ監督は嘆かずにいられなかったのかもしれない。4カ月ぶりに再開したリーグ戦の第2節を終え、川崎Fは11位から4位に浮上。一方の鹿島は依然として最下位のまま。両チームはそれぞれ、中3日でFC東京、札幌と対戦する。
取材◎サッカーマガジンWEB編集部 写真◎小山真司