この連載では再開後のJリーグで注目すべきチームやポイントなど、見所を紹介していく。連載第4回目はJ1のセレッソ大阪を取り上げる。他チームにはないその特徴は、今季のJ1を戦う上でアドバンテージになるだろう。

上写真=J1初制覇を狙うセレッソ。リーグ再開後の戦いぶりに注目だ(写真◎Getty Images)

文◎北條 聡 写真◎Getty Images

先手を取ればまず負けない

 堅守速攻では、ない。堅守遅攻、ときどき速攻――これこそ、悲願のリーグ初制覇を狙うセレッソ大阪の一大特徴だ。

この特異な戦法は再開後のJ1リーグで大きなアドバンテージになるかもしれない。とにかく、燃費がいいのだ。

 過酷な連戦を強いられる中、体力のムダ使いは死活問題。その点、ロティーナ率いるセレッソはしたたかだ。いたずらにプレーのテンポを上げたりしない。巧みなギア変速でメリハリをつける。それこそハードワークを旗印に休みなく動き回るチームとは明らかに一線を画す存在だろう。

 カウンター型に分類する向きもあるが、昨季の1試合平均のボール保持率は51.1%。上から7番目の数字だ。攻めに回ると、慌てず騒がず、パスをつないでいく。速攻の連続ならガス欠一直線だが、そうはならないわけである。

 際立つのは1試合平均のスプリント数だ。昨季の137回はJ1最少。端からアクセル全開で走りまくるような消耗の激しい戦い方をしていない。懐深く守り、対戦相手の勢いを上手にそぎ落としながら自分たちのリズムに引きずり込んでいく。前のめりで突っかけていく相手にとっては「のれんに腕押し」だろう。

 そもそも最大の強みである堅守の仕組みにムダがない。ミドルゾーンから後方に築く難攻不落のブロックは<密集・密接・密閉>の三条件がそろった代物。消耗の激しいハイプレスは控えめで、ボールにがっつくのも敵がブロック内への侵入を試みてから。そのぶん、回収作業には相応の時間を要するものの、穴が生じにくいわけだ。

 また、攻撃側に対角パスで揺さぶりをかけられても、ブロックごとボールサイドにスライドし、あっさり行く手を阻む。いくらサイコロを振っても先へ進めないスゴロクみたいだ。手堅く守るぶん、ボールの回収地点は深い。そうなると反撃が難しく、サンドバック状態になりがちだが、個々の高い技術と巧みにパス経路をつくるポジショナルプレーで敵の前線プレスをかいくぐっていく。遅攻ができる強みだろう。

 昨季の総失点25はJ1最少。1試合平均の失点率は0.74だから、1点取れば最低でも勝ち点1を拾える計算だ。クリーンシート(無失点)を記録した試合数は15。ほぼ2試合に1回は完封だ。しかも、先手を取ればまず負けない。実際、先制した試合の勝率は80%だった。