上写真=再開を前に練習に熱が入るザーゴ監督(写真◎鹿島アントラーズ)
リアクションサッカーからの大転換
これまで培ってきたものがゼロになるわけではないが、その試みは、さながらパラダイムシフトである。継続よりも、大胆なスタイル変更を選択した。世界のサッカーの潮流、否、Jリーグのチームでも導入が目立つポジショナルサッカーの確立に取り組んでいる。
実際、シーズンの開幕から文字通りの生みの苦しみを味わった。ここまで公式戦3試合は無得点で敗戦。Jリーグ切ってのタイトルホルダーであり、常勝チームであるがゆえに、その状態が長引くことは許されないが、リーグ中断期間を生かして、しっかりスタイルの浸透に努めた。
ザーゴ監督は言う。
「今までやって来たリアクションサッカー、守ってカウンターを狙うというところから、ポジションを取りながら自分たちで相手を動かしていくということに取り組んできた。選手たちにはポジションを取る、守るということをやってもらったし、適正なポジションが分かれば、だいたい味方がどこにいるのかも分かる。そういった意思の疎通を高めることが(中断期間に)できたと思います。ビルドアップの面や敵陣でのプレッシャーのかけ方についても、ち密に取り組むことができました」
前日の取材で犬飼智也も話していたが、どんな状況で、どの場所に、いかなるタイミングで選手が「立っている」のかを把握できるようになってきたという。2月の開幕時点では、まだ曖昧だった部分がチームの中でクリアになり、指揮官が目指すサッカーが次第に実践できるケースが増えた。
「選手たちのモチベーションは高い。4カ月間、サッカーできなかった状態だったので、試合をやりたいという気持ちがウズウズしていると思います。当然、2月の時点のサッカーよりも連係連動という部分は高まっていると思いますし、狙いとしているものも選手たちが実行できるようになっている。非常に楽しみなリーグ再開ですし、いいスタートを切ることができればなと思います」
再開初戦は川崎フロンターレが相手。近年はリーグ戦で分が悪く、簡単な相手ではない。指揮官も「勝者のメンタリティーを持ち、優勝候補の一角に入るチーム」と称える。その一方で「そんな相手に対して、われわれが自分たちのやるべきことをしっかりとやることが重要。何が勝敗を分けるかは、ふたを開けてみなければ分かりませんが、練習で選手たちが見せている自信を試合で見せることができれば、おそらく良い表現ができて、良い結果に結びつけることができると思っています」とも語った。
鹿島は今季、自ら転換期に足を踏み入れた。あえて時間がかかる道を行くのは、言うまでもなく恒常的に結果を出していくため。進む道が大いなる未来へと続いているかどうか、川崎戦の戦いぶりが注目される。