Jリーグが帰ってくる。J1は7月4日に再開する。4カ月間、待ち望んだ試合を前に、サッカーマガジンWEBも参加する「DAZN Jリーグ推進委員会」で、18媒体横断企画を実施した。全56クラブの選手・監督・関係者にインタビュー。「THIS IS MY CLUB - FOR RESTART WITH LOVE - 」をテーマに話を聞いた。昨季J1を制した横浜F・マリノスのスタッフ、FRM事業部の永井紘事業部長がクラブの変化とビジョンを語った。

期待と緊張が半々

いくつかのアイディアをクラブとして温めているという永井事業部長。今後の展開が楽しみだ(写真◎J.LEAGUE)

――再開後へと視線が移ったのはいつごろですか。

永井 緊急事態宣言が解除された頃から、次のフェーズに入りました。リモートマッチや入場者数に制限がかかる試合がしばらく続くことを考え、デュアルスタジアムという構想を練りました。オンライン上で仮想スタジアムをつくり、DAZNで試合を見ながら、スマホなどを第2のスクリーンとしてファン・サポーターが集まれる空間をつくる、というアイディアです。いわゆる「投げ銭」のような機能もつけています。

 実現できるかわかりませんが、あと2つほど新たなアイディアもあります。今回のようなことがないかぎり、なかなか発想の転換はできなかったと思います。

――優勝の翌年で、スタッフも一層気持ちを高めて、アイディアもたくさん抱えていたのではありませんか。

永井 クラブとしても楽しみなシーズンだったので、仕方がないとはいえ、残念ではありました。優勝したことで、それほど横浜F・マリノスに興味をお持ちではない方もスタジアムに足を運んでいただくチャンスの年だと考えて用意をしていました。それらが、以前の日常に戻るのか、生活スタイルがかわるニュー・ノーマルと呼ばれる様式になるかでアプローチは変わりますが、今は手元で温めている状況です。

――むしろこうした状況で、これまでスポーツ観戦をしたことがない人も、サッカーを見たいと興味を強めるかもしれません。

永井 そうですね。特にDAZNで試合が見られることが、ひとつの武器になるのではないかと考えています。スポーツを見たいと思った方が試合を視聴するハードルが、少し下がると感じています。新しいお客様がサッカーとF・マリノスに興味を持つ可能性はある、ととらえています。

――再開を前に、どんな心境でしょうか。

永井 正直に言うと、期待と緊張が半々ですね。スポーツの力で世の中の空気を一変させられると、とてもワクワクします。一方で、できる限りの対策をする責任があると、一層意識を高めてもいます。

 誰も経験したことがない状況で、正解というものはありません。だから、どうしたらいいかを考えてくれている仲間は、いつも以上に大変です。語弊があるかもしれませんが、それでも私たちは、楽しみながらJリーグ再開に向けて進んでいます。

取材・構成◎杉山 孝 写真◎横浜F・マリノス、J.LEAGUE

◎profile
ながい・ひろし◎1984年東京生まれ横浜育ち。2007年早稲田大学スポーツ科学部卒業後、横浜マリノス株式会社入社。チケット、ホームタウン、スポンサーセールスを担当し、2014年からマーケティング本部へ異動。現在はFRM事業部(Fan Relationship Management)として、チケットセールスチーム・試合運営/企画チーム、ファンクラブマネジメントチームを担当。