再開後のJリーグで注目すべきチームやポイントなど、見所を紹介していく連載の第3回。今週末に再開するJ1のガンバ大阪を取り上げる。宮本恒靖監督の狙いと選手に能力の高さで開幕戦では王者マリノスを撃破した。今季のガンバは一味も二味も違うーー。

懸案事項は連戦による人選変更

左の翼として活躍が期待される藤春(写真◎J.LEAGUE)

 扇形に並ぶアタック陣の位置取りも追い風だ。ウイングバックの鼻先へ送る対角パス、ブロックの隙間へ通す縦パス、さらにライン裏へピタリと落とすタッチダウンパスが遠藤の右足から自在に繰り出され、チームの攻め手が格段に広がった。攻撃の要諦である「幅と深さ」をフル活用するのだから、守備側はたまったものではない。

 仮に4-1-2-3へ配置を変えても、ほぼ同じ数のチャンネル(パス経路)を確保できる。そうなれば、マッチアップのズレを狙った対3バック仕様の変形(攻撃時の布陣)として選択肢に入れても面白いだろう。目論見どおりに事が運ばなくても、本来の3-1-4-2へ戻せば済む話。そこが同じ面子で自在に配置を動かせる強みだ。

 懸案事項は布陣の変形よりも、未曾有の連戦に伴う人選の変更にある。とりわけ、40歳の大台に達した遠藤をどう使っていくか。再開初戦の大阪ダービーでJ1最多出場記録の更新を狙う鉄人だが、連戦中もフル稼働できるかどうかはさすがに未知数だろう。

 温存する場合には開幕戦で攻守に出色の働きを演じた矢島慎也をピボットに回す算段か。そもそも3-1-4-2の新布陣をインストールした当初はこの人が中盤の深い位置に構え、攻撃のタクトを振るっていた。矢島が先発ならば、状態次第で遠藤を勝負どころの切り札に使える。それはそれで魅力的な戦術プランだろう。

 気がかりと言えば、小野瀬と藤春の使い方だ。どちらも破格の走力と運動量を誇るが、労働過多のポジションだけに酷使は禁物。そこでどうやりくりするか。右でも左でも使える福田湧矢の存在は大きいが、その実は攻撃型だ。藤春とは違い、サイドバックでは使いにくい。つまり、4バックへの変形は棚上げとなる。その意味で藤春の控えを補強したいところだが、どうなるか。

 ともあれ、ベストの陣容で戦えば、変幻自在のトランスフォーメーションは機能する。戦術自体も押し引き自在で、ポゼッションもカウンターもしかと手の内にある。機に臨み、変に応ずる強みをもって、天下取りに名乗りを上げるはずだ。