鹿島アントラーズとのトレーニングマッチには3人の大卒ルーキーが出場したが、田中駿汰とともに1本目から先発したのがボランチの高嶺朋樹だ。その左足はチームの大きな実りをもたらすかもしれない。

上写真=ボランチとして能力の高さを示した高嶺(写真◎近藤俊哉)

■2020年3月21日 トレーニングマッチ(45分×2本) @カシマスタジアム
 鹿島 2-4 札幌
 得点:(鹿)町田浩樹、ファン・アラーノ
    (札)鈴木武蔵2、ジェイ2

ボールを奪い切るところは向上している(高嶺)

 右CBの位置からワイドに開き、ライン際で待つ駒井善成が大きな声をあげる。「トモキ、トモキ!」。次の瞬間、自陣深い位置から駒井の元へとボールが届いた。パスの出し手は、高嶺朋樹。この日、ドイスボランチの一角を担った大卒ルーキーである。

 正確な左足キックで、ロングパスとミドルパスを何度も繰り出した。そもそも札幌には福森晃斗というリーグ屈指の左足の持ち主がいるが、今季はそこへもう一人、左足のスペシャリストが加わっている。

 鹿島戦では突破力のある白井康介が右アウトサイドを務め、攻撃に特長を持つ駒井が再三、ライン際で待ち構えたために、とくに前半の札幌の攻撃はやや右偏重になった。ただ、受け手の特長を引き出した、福森、そして高嶺という出し手の存在は見逃せない。ピッチを斜めに横断し、一気にサイドを変える対角のパスが、今季の札幌の大きな武器と言えるかもしれない。

 そしてもう一つ、高嶺はボランチとして欠かせない守備姿勢も見せた。相手ボールホルダーに果敢にアタックし、ボール奪取を再三、狙った。前でつぶす意識の高さが見えた。その点は、キャンプから取り組んできたこともでもある。

「レベルの高い選手たちと常に練習させてもらっている中で、守備のところ、とくにボールを奪い切るというところは向上していると思います」

 2本目からボランチコンビを組んだ深井一希は「ボールを取りに行くときは勢いよくいくタイプ」と高嶺について語る。深井の高嶺評は、その持ち味がチームに浸透している証左だろう。

「公式戦と似たような試合で勝利できたというのはチームとしてよかったと思います。課題としては、得点を多く取れましたけど、守備のところで2失点してしまっているので、そこは少なくしていけるように。もっともっとやっていかないといけないと思っています」

 ルヴァンカップ開幕戦で先発を勝ち取ったものの、その勢いのままJ1開幕戦に先発というわけにはいかなかった。Jクラブからの補強がなかった札幌だが、複数ポジションをこなす選手たちが多く、層は厚い。とりわけボランチは、深井、荒野拓馬、宮澤裕樹、駒井、田中駿汰ら多士済々。その中でルーキーの高嶺が定位置を確保するのは簡単ではない。

 だが、リーグ戦が延期した影響で、再開後はハードな日程をこなすことになる。週2試合こなすケースも増える。当然ながら選手をローテーションしなくては乗り切ることが難しい。総力戦に臨む中で出場機会は頻繁に訪れるだろう。そこで、いかに自身の優先順位を上げていくか。

 自身が考える、定位置どりに必要なものとは? との問いに、高嶺は迷いなく答えた。

「ビルドアップだったり、守備の強度というのはチームで求められていること。当然、そこをやりつつ、プラスアルファでアシストだったり、結果を出していけば、チャンスが出てくると思っています」

 正確な左足。ボールへの果敢なアプローチ。そして向上心。野々村芳和社長はキャンプ時に「大卒ルーキーがチームを刺激している」と話していたが、なるほど、高嶺の存在は今季のコンサドーレを間違いなく刺激している。

取材◎佐藤 景