J1の鹿島アントラーズは21日、北海道コンサドーレ札幌と無観客でトレーニングマッチ(45本×2本、35分×2本)を行なった。2本目途中からピッチに立ったU-23日本代表のFW上田綺世は試合後、新型コロナ感染予防のためビデオ通話での取材に応じた。

上写真=札幌との練習試合で2得点を記録したFW上田(写真◎近藤俊哉)

鹿島で活躍するために

 今季は開幕前に太ももの負傷で出遅れたが、トップコンディションに戻りつつある。札幌とのトレーニングマッチでは4本目に2ゴールを記録し、直近の練習試合4試合で4得点。「点を取る感覚は鋭くなっている」。だからこそ、公式戦が開催されない現状がもどかしい。

 新型コロナウイルスの影響でJリーグは2月下旬から中断中。感染は世界中に広がり、今夏の東京五輪開催も危ぶまれている。先日にはIOC(国際オリンピック委員会)のバッハ会長が「違うシナリオは検討している」と発言するなど、延期あるいは中止の可能性が高まってきた。さまざまな情報が飛び交う中、これまで五輪世代の代表チームで最多15得点を記録しているエース候補の上田は、現在の心境を淡々と語った。

「延期だったら延期、中止だったら中止で、それは運命かなと。僕が東京五輪世代にいるのも、また運命なので。延期になったら出られる選手が出るし、出られなくなった選手は出られない。あくまで競争なので。僕個人としては、まずは鹿島で活躍するためにやっている。鹿島で結果を残して、そこから五輪に行けたらいいと思うので、延期も中止も、僕はそんなに気にしていないです」

 チームのためにゴールを奪う――。常々、上田が口にしている言葉であり、揺るがない信条だ。その“チーム”には選手、スタッフだけでなく、サポーターも含まれる。ここ数週間、無観客での練習試合を経験する中で、改めてサポーターの存在の大きさを感じているという。

「サポーターの皆さんの声援というのは、皆さんが思っている以上に僕らの力になっていますし、自分一人でモチベーションをつくるのはすごく難しい。応援や支えが選手のモチベーションに大きく関わるので。僕らプロはサッカーを仕事としていますが、背負っているのは自分たちの生活だけじゃない。応援してくれる方々に勝利を届けることが僕らの仕事でもあるので、そういった背負うものが目に見えないというのは寂しい」

 静寂に包まれたスタジアムで2ゴールを挙げた直後の言葉には、実感がこもっていた。

取材◎多賀祐輔