現在、Jリーグは開幕戦を終えて中断中だが、この連載では再開後のリーグ戦でさらなる活躍が期待される各クラブの注目選手を紹介していく。連載第17回は、サガン鳥栖のMF松岡大起を取り上げる。

鳥栖の戦士らしい美徳

川崎Fとの開幕戦では攻守両面でハードワークを続けた(写真◎Getty Images)

 表情にはまだあどけなさが残るが、当たり負けしない球際の強さや勝負度胸は「大人」のそれ。基本技術のミスが少ないうえに、全体を見渡した上での位置取りや仕事の優先順位を間違えない。複数のポジションを涼しい顔でこなせてしまうのも、水準以上の戦術眼を備えているからだろう。それが敵側のボールを刈り取り、すかさず四方へさばく本業の基盤じゃなかろうか。

 17歳でJ1デビューを飾った昨季は、リーグ戦で23試合に出場。ゲーム体力を培い、高い強度を維持して、90分を戦い抜くタフさが一段と増した感もある。今季の開幕戦では本田風智がベンチに退いた後、ポジションを1つ上げて、前進と後退を交互に繰り返しながら敵に圧力をかける細やかなプレスまで実践してみせた。

 今季からトップに昇格した同期の本田風智にも言えるが、才能の上にあぐらをかかず、野心的で力強く、ハードワークを怠らない。いかにも鳥栖の戦士らしい美徳を備えているあたりは当人たちの資質はもちろん、金監督の熱心な指導の賜物だろう。そこに高い技術と戦術眼が乗っかっているのだから、期待はふくらむばかりだ。

 チーム自体もスタメンの顔ぶれががらりと変わり、その半数以上が新人と移籍組という新鮮味にあふれている。開幕戦ではチームのやりたいことの半分も出せなかったかもしれないが、ルヴァンカップ初戦の戦いぶりを引き合いに出すまでもなく、金監督の新たに打ち出したゲームモデルも実に魅力的なものだ。

 そこでアカデミー育ちの松岡が重要なキャストを担うことは、クラブの在り方としても理想的なシナリオだろう。もちろん、本田のスタメン起用も含めて。果たして、この1年でどんな選手に成長するか。あれやこれや想像をふくらませるだけでも十分に楽しめる。そりゃ1日も早く生のプレーが見られるなら、それに越したことはないが。

Profile
まつおか・だいき◎2001年6月1日生まれ、熊本県出身。中学卒業後にサガン鳥栖のアカデミーに入り、高校2年時の2018年に天皇杯でトップチームデビュー。2019年にはJ1リーグに出場し、同年6月にクラブ史上初となる高校3年時でのトップ昇格を果たした。東京五輪代表にも招集されたことがある。MF。170cm、65kg