サンフレッチェ広島の城福浩監督が、Jリーグ再開を見据えてチーム力アップを図っている。3月11日のファジアーノ岡山との練習試合は引き分け。先制しながらも追い付かれた展開に、克服すべき課題を見いだしていた。

上写真=2シャドーの一角でプレーしたMFエゼキエウ。惜しいシュートを放つなど要所で持ち味を発揮した(写真◎石倉利英)

「しっかり検証できる試合」

 3月11日にエディオンスタジアム広島で行なわれたファジアーノ岡山との練習試合は、2試合分の45分×4本で行なわれた。両チームともメンバーは1本目と2本目が、中断される前のリーグ戦に先発していた主力組が中心で、3本目と4本目がそれ以外、というすみ分け。1本目の33分に広島がFWレアンドロ・ペレイラのゴールで先制したものの、岡山も42分にFWイ・ヨンジェが決めて同点。2本目は両チーム無得点で1試合目は1-1の引き分け、3本目と4本目も両チーム無得点で、2試合目も0-0の引き分けだった。

 広島は1本目、立ち上がりからボール支配率で上回って押し気味に進め、先制したまではよかったが、数少ないピンチでセットプレーから同点とされた。2本目も同様に優勢に進めながら、先にPKを取られてピンチを迎えたものの、岡山FW清水慎太郎のキックをGK林卓人が見事にセーブ。その後、逆にPKのチャンスがあったが、今度はFW永井龍のキックを岡山GKポープ・ウィリアムが鮮やかに止めている。

 城福浩監督は1試合目を振り返り、「結果的には1-1でしたが、課題も見えました。良い状況から(先に)1点を取り、緩めたわけではないですが、さらに圧力をかけないと、ああいうFK一発で失点することは、公式戦でも十分あり得る」とコメント。新型コロナウイルスの影響で全公式戦が延期されている今季のJリーグが、再開後に過密日程となりそうなことを踏まえ、「これから自分たちが連戦に臨むにあたり、すごく良いシチュエーションを経験できた。追加点が奪えなかったことも含めて、しっかり検証できる試合だった」と、この試合の意義を強調した。

 収穫の一つは、2シャドーの一角で先発した今季新加入のブラジル人MFエゼキエウが好プレーを見せたことか。持ち味のスピードや個人技に、コンビネーションも交えてゴールに迫り、惜しくも左ポストに当たって決まらなかったが、エリア内でスルーパスに反応して鋭い左足シュートを放つ場面もあった。ここまでの公式戦2試合(2月16日のルヴァンカップ・横浜FC戦と、23日のJ1リーグ、鹿島アントラーズ戦)はベンチ外だったが、中断期間中に定位置争いに食い込んでくる可能性も十分ありそうだ。

 城福監督も「攻撃面は、だんだん良さを出せてきていると思う」と一定の評価を与えている。「周りも、エゼキエウにどういうボールを預ければ、どういうボールが返ってくるのか、意思疎通ができてきた。そこはもっと続けていきたい」とも語ったように、今後は周囲との連係向上がポイント。その点では、この試合で同時に先発したL・ペレイラ、FWドウグラス・ヴィエイラ、MFハイネルと、日本での経験がある同胞のブラジル人選手3人の存在は大きいだろう。

 広島は、当初3月18日と予定されていたJリーグ再開に向けて、3月4日にレノファ山口、11日に岡山と、1週間単位で逆算して練習試合を組んだが、今後は4月3日の金曜日、アウェーのヴィッセル神戸戦での再開に向けて準備を進めていく。さらなる練習試合も予定されており、無得点に終わった3本目、4本目のメンバーの底上げも含め、チーム力アップの努力を続けていくことになる。

文◎石倉利英 写真◎石倉利英