現在、Jリーグは開幕戦を終えて中断中だが、この連載では再開後のリーグ戦でさらなる活躍が期待される各クラブの注目選手を紹介していく。連載第12回は、横浜FCの大卒新人、MF瀬古樹を取り上げる。

待望の第1ボランチ

神戸とのリーグ開幕戦でフル出場。的確なポジショニングが光った(写真◎J.LEAGUE)

 この「守れるボランチ」は横浜FCの待ち人だった。昨季途中から3列目で使われた中村俊輔や松井大輔は言うに及ばず、生え抜きの佐藤謙介も配球力に秀でた司令塔だ。そこで下平隆宏監督は対戦相手の特徴や互いの力関係を踏まえて、本来はセンターバックの田代真一をボランチで使うこともあった。J1の強豪を相手に守り手としても十分に計算できるのが田代だけではさすがに苦しい。そうした背景を考えても、攻守の両面における瀬古の働きには大きな値打ちがあるわけだ。

 言わば待望の第1ボランチ。下平監督の肝煎りで柏レイソルから期限付き移籍で加わった手塚は天才肌のパサーで、第2ボランチに打ってつけの人材だから補完性も申し分ない。

 J1昇格を決めた昨季は大卒1年目の中山克広と特別指定選手の松尾佑介が両翼に収まるや破竹の快進撃が始まった。当時の無双に近い働きぶりからも察しがつくとおり、彼らの実力はJ1でも十分に通用するシロモノ。事実、神戸戦でも回数こそ少なかったが、迫りくる寄せ手をやすやすとはがしてチャンスをつくりだした。

 厳密に言えば松尾も新人だが、すでに売れ筋に乗りかけた逸材だ。その松尾と同様、瀬古も特別指定選手に登録され、練習にも参加していたものの、出番は回ってこなかった。これが満を持して臨んだ開幕戦で躍動する伏線だったか。

 カズ(三浦知良)のほかにも中村や松井、かつてのJ1年間MVPでもあるレアンドロ・ドミンゲスといった大御所ぞろいの一方、若く魅力的なタレントも目白押しだ。瀬古はその最新作としてまだ売り出されたばかり。この先、どこまで名を上げるか。すでに重鎮風だが。

Profile
せこ・たつき◎1997年12月22日生まれ、東京都出身。小学校から高校まで三菱養和SCでプレーし、高校卒業後は明治大に進学。4年時には同級生の安部柊斗(FC東京)らとともに大学主要タイトルを総なめにした。昨年7月に横浜FCへの加入が内定。今季、神戸とのJ1開幕戦でプロ初ゴールを記録した。MF。175cm、69㎏