写真◎J.LEAGUE
ルヴァンカップは第1節、J1、J2も第1節を終えて中断されることになった。再開までの間、開幕戦を材料に『シーズン最初の一歩』で目を引いた各クラブの注目選手を紹介していく。連載第2回は湘南ベルマーレのMF鈴木冬一だ。
上写真=正確なクロスで存在感を示した湘南の鈴木冬一(写真◎J.LEAGUE)
文◎北條 聡
すべては出し手次第
あれを「本物」と呼ぶんじゃなかろうか。
湘南ベルマーレの鈴木冬一が放つ極上のクロスだ。先のJ1開幕戦で記録した2つのアシストはその好例。どちらもピンポイントで受け手の頭に吸い込まれていった。
味方の頭に合わせるクロスの狙い目は守備者と守備者の間(あいだ)に生じるスペースだ。そこへ狙いどおりにボールを落とせるかどうか。出し手のキック精度が十中八九、得点の成否を決めてしまう。
こっちは守備者の間で待つだけ。すべては出し手次第や――とは、日本史上最高のストライカー(釜本邦茂氏)のお言葉。ボックス内に受け手の使えるスペースがあるならともかく、敵と味方が密集している場合は確かにそうだろう。
鈴木はその小さなスペースへ一度ならず、二度も絶好球を落として見せた。それこそ、頭に当てればゴールというシロモノ。球筋も見事だった。
頭上を抜かれた守備者の位置取りの悪さを指摘する向きもあるが、触れそうで触れない微妙な軌道で飛んでくるからこそ「かぶる」わけだ。
また、球速も絶妙だった。速すぎると、受け手が仕留め損ねる恐れがあり、スピードが足りないと、守備側に適切な場所へ移動する時間を与えてしまう。
かようにハードルが高いからこそ、密集地帯へ送るクロスは点につながりにくい。
鈴木のキックがいかに優秀か。それを知らしめる格好のプロモーションだったかもしれない。