2020年はヴィッセル神戸の年になる――。年明けからタイトルを2つ獲得し、勢いに乗るチームの指揮官トルステン・フィンクは新シーズンをどう展望しているのか。就任2年目の指揮官の考えとは?

上写真=キックオフカンファレンスで取材に対応するフィンク監督(写真◎J.LEAGUE)

結果で雄弁に語る

 2020年は素晴らしいスタートを切った。昨季の最終戦である元日の天皇杯決勝で鹿島アントラーズを破って優勝を果たし、クラブにとっての初タイトルを手にした。そして新シーズンの開幕を告げる2月8日のFUJI ZEROX SUPERCUPでは昨年度のJ1王者である横浜F・マリノスをPK戦の末に下して優勝。さらに2月12日に、これまた初めて臨んだACLの開幕戦(ジョホール戦)に快勝し、これ以上ない形で新しい年を始めている。

 天皇杯決勝を戦ったことから休みが短くなり、始動からわずか2週間あまりで、新シーズンの試合に臨まねばならなかったが、昨季途中から指揮を執るフィンク監督はチームコンセプトの浸透に大きな手ごたえを感じている。

 例えばその一つが、プレス。ゼロックス杯の試合後には「プレッシングは、われわれが練習でやっていること。今日はプレッシングからうまくゴールにつながった。ただ選手の体力の問題で、強度を保てず、逆にゴールを許してしまったが、われわれはプレッシングのサッカーをしていきたいので、今後もそういう戦い方を続けていく」と話した。狙いとしていた高い位置でのプレスからゴールを奪ったことは大きな収穫だった。

 そしてもう一つ。これは就任以来、繰り返し話していることだが、ACL初戦の試合後に触れている。

「ボールポゼッションというのは(われわれの)基本」。

 つまりは、こういうことだ。ボールを保持して相手を押し込み、ボールを失ったらプレスで即時回収に注力し、ショートカウンターを狙う。指揮官が求める攻守一体のサッカーの習熟は着実に進んでいる。

「常に高い位置でプレッシャーを保って、そのプレッシャーからゴールをというのは一つの理想」
「(システムの採用は)状況を見て判断する。相手の戦術とかスタイルによって、何が一番いいのかを考える。ただあまり相手に合わせすぎずに、自分たちの特長が一番うまく出せるものを選択したい。3バックでも4バックでも基本のスタイルは一緒になる」

 キックオフカンファレンスでも、自身の求めるサッカーについて従来通りの考えを口にした。その一方で。

「私には結果を出すためのアイディアがある。状況を見極めることが必要になる。選手のコンディション、相手のスタイル、気候、日程も含め、さまざまなことを考慮して、柔軟に戦う」とも話す。

 昨季も4バックと3バックを使い分けた。ポゼッションに固執したわけでもない。重要なのは、勝利。2020年はフィンク体制で、すでに二つのタイトルを取った。

「トップスターも、若い選手も、チーム全員で戦う。互いに理解して、柔軟に戦う」

 フィンク監督は、結果で所信を表明している。