FUJI XEROX SUPER CUPでPK戦の末にヴィッセル神戸に敗れ、タイトルを逃した横浜F・マリノスの守護神、朴一圭は試合後に何度も悔しさを口にした。この敗戦をプレシーズンマッチの1試合ととらえるだけでは連覇などできないと危機感を募らせた。

上写真=守護神・朴一圭はシーズン初戦でタイトルを逸したことを悔しがった(写真◎J.LEAGUE)

勝つことにこだわらないと

 90分を終えてのスコアは3-3。常にリードを許す苦しい展開の中で追いつき、PK戦に持ち込んだが、横浜FMはタイトルを手にすることができなかった。とりわけ前半の戦いぶりは、J1王者らしさが見られず、ミスも頻発。課題が噴出した。

「失敗から学びましょう、というのはよくないと思っています。本当は今日からシーズンが始まったわけで、ここからトップギアを入れてやっていかないといけなかった。それがうまくできなかった。すごく残念です。ここからリーグ戦が始まるし、そしてACLが始まる。そこに切り替えてやっていくしかない。まだまだ力が足りない。チームとしての経験も足りない」

 口をつくのは、反省と悔しさだ。チアゴ・マルチンスとのパス交換の際にボールを奪われたシーンについても、最初にボールを預けた自身を責める。「昨年だったら、ああいうことはなかったし、甘さがあった」と振り返った。

 そして、拙攻が続いた前半と積極的になった後半の違いについても言及した。

「やっぱりみんなが強い気持ちを持って積極的にゴールを奪うという意思表示が前半と後半で違った。本気でゴールを奪うというところが後半の方が強かったと思う。前半はメンタル的な部分で受け身になってしまって、後半は負けていることもあってリスクを負ってでもゴールを取りに行った。その姿勢の差が前半と後半で出たのかなと思います。
(ハーフタイムに)選手同士で話したのもありますし、監督からも『すごく残念だ』という話をされて。今まで積み上げてきたものが全くできていないと。確かに自分たちも、『何をやっているんだ』という話をしました。監督は特に怒っているということではなくて、本当に淡々と『うちは何をしなければいけないのか』について伝えたというか。それが選手個人個人に、胸を打つものがあったと思います。それを各々で確認して、後半の良い45分になった。でも、それではダメなわけで」

 前半から自分たちががやるべきことを実践するのが、本来のマリノス姿だ。優勝のかかった昨季のJ1最終節、FC東京戦。重圧をものともせず、普段通りにプレーする仲間の姿を最後尾から確認し、試合開始早々に優勝を確信したと朴一圭は話していた。そんなチームとこの日のチームはまるで違った。驕りか、慢心か。自戒を込めて、朴は言う。

「(神戸戦では)上積みがなかったし、逆に戻ってしまったというか。僕は2年前を知らないですけど、2年前もこういう失点が多かったと思うんですよ。パスミスでボールを取られて…それがすごく残念。去年はこういう失点が少なかった。自分は、積み上げてきたものを崩してしまったような感じがしています。せっかくキャンプでいい状況を作ってきたのに、試合で出さなければいけないところで、みんなが出し切れずにもったない試合をしてしまった。ただただ消化試合をしたような。せっかくみなさんに良いサッカーを見せるチャンスだったのに、自分たちから悪いサッカーをしてしまった。
 たぶん、全国のファンの方、サッカーを見ている方は思ったと思います。『今年のマリノス、大丈夫なのか?』と。そう思われたかもしれないのは、すごく残念です。ACLもありますし、ここまで急ピッチで作ってはきましたけど、まだまだここから。シーズンは続くので、勝つことにこだわって、結果にこだわってやっていなないといけない。そう、改めて思いました」

 このまま、悪い流れを引きずってズルズルいってしまうことは避けなければならない。だから言葉を選びつつ、朴は警鐘を鳴らしたのだろう。PK戦で勝利を引き寄せられず、自身の力不足を痛感しつつも、あえて。

 神戸戦の試合後、朴と同様に反省を口にし、危機感を募らせていたマリノスの選手は多い。朴の言う通り「失敗から学ぶ」を繰り返し言い訳にするのは良くないが、課題をチームとして共有し、次に生かせば、それは貴重な経験になる。

 ACLは明日12日に全北現代との初戦を迎え、J1リーグは12日後の2月23日にガンバ大阪との開幕戦を戦う。

取材◎佐藤 景