昨季、京都サンガF.C.で17ゴールを挙げた一美和成が新天地を求めたのは、J1で結果を出すことが必要だと考えたからだった。横浜FCに所属する東京五輪世代の大型ストライカーが、2020年に懸ける思いを語った。

上写真=2ケタゴールを達成したら、去年の得点数を越えたいと一美は抱負を語った(写真◎BBM)

まずはスタメンを勝ち取ること

 イバや皆川佑介ら昨季、下平隆宏監督の下でFWを務めてきた選手たちからポジションを奪うのは、簡単ではない。それでも横浜FCという新天地を選んだのは、一美自身が2020年をキャリアを左右する大事な1年と考えているからだった。

「簡単なシーズンではないと思いますが、僕としては今年オリンピックがあるし、勝負の年だと考えています。だから目に見える形で数字を残していきたい」

 J1の舞台で自らを磨き、得点という結果を積み重ねた先に東京五輪という舞台が待っている――。一美は今年、そう自分の歩むべき道を設定した。

 東京五輪のサッカー競技の開幕は7月22日だが、合宿期間を考慮すれば、メンバー発表はそれよりも1カ月以上前になるとも予想されている。つまり、時間はそれほど残されていない。2月23日のシーズン開幕からアピールしていくことが必要になる。

「まず個人としてはスタメンを勝ち取ることが大事だと思いますし、その上で結果を出さないと厳しいと思う」

 京都時代は17ゴールを積み上げた。カテゴリーは変わるが、2ケタゴールを自らの最初の目標としたのは、そんな強い思いがあるからだ。競争に勝ち、ネットを揺らし、そして大舞台に立つという覚悟が、その言葉にこもる。

「試合に出続けるということは必須です。その上で結果を残す。FWの選手は見える数字が一番重要。そこで他の選手よりも(得点やアシストという)数字を残すというのが個人的な目標になります」

 もちろん、個人的な思いを果たすためだけにプレーするわけではない。フォア・ザ・チームの精神がベースにあって、その上で点を取ることやアシストすることが、自分が最もチームに貢献できることだと理解している。新体制発表の席でも、「ゴールとポストプレー」が自らのアピールポイントだと説明していた。

 その新体制発表は、AFC U-23選手権で日本がシリアに敗れ、グループステージ敗退が決まった翌日に行なわれた。五輪出場を目指す仲間たちの戦いぶりをどう見たのか。一美に感想を聞いた。

「(試合は見ましたか?)見ました。一緒にやっているメンバーもいますし、個人の能力はすごくあると思いますけど、噛み合ってない部分があったのかなと。試合としては非常に持ったいなかったとは思います。あとは試合を見ながら自分が入ったらこういうイメージになるかを考えていました。自分は選ばれていないので、悔しい部分がありますけど、そこはしっかりと見て勉強しようと思って。自分が入ったら、何ができるかと」

 あの場にいなかった悔しさを感じつつも、決意を新たにしたという。あの中に、自分がいたら。

「京都のときも1トップでやらせてもらっていて、仙頭啓矢選手と小屋松知哉選手というサイドにスピードのある選手がいて、自分は中で待っていて決めるというシーンが何度かありました。横浜FCでのプレーも、その点ではイメージはできます。そして(シリア戦は)代表も1トップでやっていたので、そこもイメージができています」

 横浜FCで活躍し、チームに貢献し、そして五輪へ。青写真は描けている。あとは、一つ一つ実現していくだけ。自らの力で扉を開くだけ――。

取材◎佐藤 景