後半アディショナルタイムに同点とされ肩を落とす湘南の選手たちだが、この勝ち点1の意味は大きい 写真◎J.LEAGUE PHOTOS

 湘南はC大阪と1-1で引き分けた。リードして迎えた90+4分の自陣でのCKで、攻め上がってきたC大阪GKキム・ジンヒョンのシュートはポストを叩いたものの、最後はソウザに押し込まれた。まさにラストプレーで決められて勝利を逃した湘南だが、確実に得るものもある一戦だった。

■2018年9月22日 J1リーグ第27節
湘南 1-1 C大阪
得点者:(湘)大野和成 (C)ソウザ

「前への矢印が極端に大事なチーム」

【動画】GKも参戦した終了間際のセットプレーをソウザがねじ込んでC大阪が追いつく!(J1第27節・湘南1-1C大阪)

「勝ち点を落としたとみるか、取ったとみるか。こういう勝ち点1が次につながるようにしないといけない」。曺貴裁監督は、そう話した。先制点には、確実に「可能性」が詰まっていた。

 87分、爆発的にプレーが加速した。スイッチを入れたのは、2人の交代選手だった。

 自陣右サイドで受けた縦パスを、1タッチで山口和樹がはたく。サイドライン際でスピードを落とすことなく受けた石原広教は、さらにギアを上げる。2人の追随者を引き離し、最後は警告付随のファウルを誘発して、FKを獲得。このセットプレーが、先制点につながった。

「交代で出たら、前へ前へと出ていける、自分が受けたら前に行けると思っていました」。19歳とは思えないほどしっかりした話しぶりで、石原は出場を待つ間の心持ちを語った。一方で、プレーには若さが充満していた。

 石原のドリブルを導いた山口は、イ・ジョンヒョプの負傷を受けてのスクランブル発進だったが、「準備はできていました」。その言葉どおりに積極的に攻撃でも守備でもベクトルを前に向けたプレーを披露した。石原が奪ったFKの場面では、クリアボールを拾って大野和成のゴールにつなげた。「トラップしようと思ったら、いい形で送れたというか。ミスと言えばミスですが、結果オーライです」。ゴールへの意識が、幸運を引き寄せた。

 山口は92分にも長いドリブルで速攻に移り、石川俊輝に絶好機をプレゼントしている。「前を向いて仕事をしろと曺さんに言われていたので。決めてほしかったですけど、あれは良かったと思います」。まだ走り足りないかのように話した。

 山口は、この日がリーグ初出場だった。石原は先発が3試合で途切れた後だったが、「自分がやることは変わらないので、難しさはありません。少ないチャンスをものにしないといけないし、出させてもらったら、やることをやるという感じ」。試合に出る意味をかみ締めるからこそ、そう語る。

 引き絞った弓を放つように、試合に飢える若い力がチームを前に進ませた。曺貴裁監督は言う。「我々は、前への矢印が極端に大事なチーム」。この勝ち点1が持つ意味は大きい。

取材◎杉山 孝