■2018年8月15日 J1リーグ第22節
浦和 4-0 磐田
得点者:(浦)ファブリシオ3、槙野

 ※貴重な先制ゴールのきっかけを作った青木。渋い働きがチームに勢いをもたらした 写真◎J.LEAGUE PHOTOS

 浦和が4点を奪って、快勝。前半は好機を生かせなかったが、後半にチャンスを物にする。55分にファブリシオがこぼれ球を直接左足ボレーでネットに突き刺し、先制ゴール。61分にもファブリシオが追加点をマークした終盤にも2点を加え、ファブリシオは来日後、初のハットトリックを達成。磐田は後半からセカンドボールを拾えずに後手に回り、失点を重ねた。中断明けは1勝4分け2敗と苦しい状況が続く。

「こぼれてくると思った」

 名脇役の青木拓矢が、主役のファブリシオを輝かせた。派手なプレーはほとんどないものの、抜け目がない。勝負どころでするするとゴール前に顔を出し、スキあらば鋭い縦パスを通してみせる。

 0-0の55分、ペナルティーエリアのすぐ外で、こぼれ球にいち早く反応。後方から走り込むと、勢いそのまま地をはう弾丸のミドルシュートを放つ。相手GKは体に当てるのがやっと。そのはね返りをファブリシオがボレーで叩き込むと、チームに待望の先制点が生まれた。

「とりあえず枠。ゴールの枠に飛ばすことだけを考えた」

 ファブリシオではなく青木の弁だ。光ったのは、セカンドボールを拾った絶妙のポジショニングだろう。

「こぼれてきそうだな、と思っていた。狙っていました」

 してやったりの顔だった。

 得点後は喜びの輪を遠目で見ながら、ゆっくりピッチの脇へ。泥臭く汗をかき続ける男には、やるべきことがあった。

「水分を補強していました」

 そして、また走り始める。61分には中盤の底から難しい縦パスを武藤雄樹にぴたりと通す。ボールを受けた武藤からファブリシオへつなぎ、2点目が生まれた。3点目につながったCKも、青木の縦パスがきっかけで得たものだ。

「きょうはうまく縦パスを出せましたね。武藤がいい動きをしてくれているから」

 陰の功労者は表立って、アピールすることはない。3ゴールに絡んでも「それを見てくれている人がいるといいですね」と静かに笑う。この日の取材エリアでは多くの記者に囲まれることもなく、質問にひとしきり答えると、軽い足取りで帰りのバスへ乗り込んだ。今夜も試合の映像を自宅で見返し、一人反省会をするという。ナイトゲームのあとでも、ルーティンは変わらない。

取材◎杉園昌之