松木玖生が「3度目の正直」で高校選手権の頂点に立った。1月10日に行われた第100回全国高校サッカー選手権の決勝。4年連続で決勝に進出した青森山田(青森)は大津(熊本)を寄せ付けず、4-0の圧勝で制した。1年生から3回目の挑戦で松木玖生が、ついにチャンピオンになった。

上写真=青森山田が3年ぶりの優勝。松木玖生(右から2人目)が仲間と最高の笑顔を見せた(写真◎小山真司)

■2022年1月10日 全国高校サッカー選手権決勝(@東京・国立)
大津 0-4 青森山田
得点者:(大)なし
    (青)丸山大和、名須川真光、松木玖生、渡邊星来

「チームメートに感謝を伝えたい」

 両手を上げて、でも笑顔はなし。試合終了のホイッスルが国立競技場に鳴り響いた瞬間、松木玖生はクールに日本一をかみ締めた。スコアは4-0。許したシュートはゼロ。完璧な勝利だった。

「今シーズンを通して一番、二番を争うぐらいの結果だったと思います」

 ピッチを降りると、晴れ晴れとした爽快な笑顔が浮かんだ。

「仲間と一緒に取った3冠なので、一緒に喜びを分かち合いたいと思います」

 大きな声でそうヒーローインタビューに答えて仲間の列に戻ると、涙がこぼれた。

 青森山田がチャンスはありながら決めきれないもどかしい流れを一変させたのは、やはりこの男だった。

 松木は36分、左サイドでぐいぐいと持ち運ぶロングドリブルからCKを獲得した。相手を力で押し込むような迫力ある突破から、ボールがゴールラインを割るとすぐに、味方のほうに振り返って両手を強く振り上げて厳しい表情。「このコーナーで行くぞ!」と鼓舞した。

「チームに勢いがなくなった時間なので、自分で仕掛けてコーナーを取りにいくようなクロスを上げてうまく取れて、それが得点につながったのが一番の収穫です」

 早くも9本目となるこの左CKを藤森颯太が中央へ低く蹴り込むと、走り込んできた丸山大和がヘッドで流し込んで、青森山田が37分に先制する。「自分の気持ちが伝わったと思います」と松木の檄が乗り移ったのだ。41分には名須川真光が決めて、あっという間にリードを2点に広げた。

 これで終わらずに、さらに自分で決めてしまうのだから、スターの証明だ。55分、藤森の左からのロングスローがクリアされたところを、再び藤森が反応してヘッドで中へ。これを松木が相手より前に出てヘッドできっちりとたたき、GK佐藤瑠星を弾くようにしてゴールに押し込んだ。

 78分には渡邊星来にもゴールが飛び出して、終わってみれば4-0という大差で優勝、3冠を達成したのだった。

 松木にとっては1年生のときには静岡学園(静岡)に2点リードしながら逆転され、2年生のときには山梨学院(山梨)に2-2に追いつかれてPK戦で、2年続けて阻まれてきた決勝の壁だった。だから、「3点目」を松木が自分自身で決めたのはどこか象徴的だった。

「自分が全国で一番、この選手権で悔しい思いをしていて、このチームでなら優勝できると思いました。チームメートに感謝を伝えたい」

 キャプテンとして嫌われ役も買って出た。「1年生では自由にやらせてもらって、2年生のときは個でいきたい気持ちが芽生えました。3年生のこの大会では、自分が犠牲になってでもチームを勝たせたいと思って頑張りました」と心の成長も実感した。

「点数を決められるようになったし、犠牲になれば自分のところに転がってくると思います。それが今大会で得た収穫だと思います」

 そんな姿を、黒田剛監督もずっと見守ってきた。

「今年1年に関しては、注目される中でも、キャプテンとして団結力、チームプレーに徹して、決して自分、自分にならないようにコントロールしてきたと思います。その姿を見てみんな必死についていったし、我を殺しながらチームのために走り、跳び、決めることまで結果として示してくれた、最高のキャプテンだったと思います」

 最上級の褒め言葉。青森山田中から戦ってきた6年の集大成は、素晴らしいハッピーエンドになった。