上写真=57分、松木玖生が相手のボールを奪ってから一気に3点目を決めた(写真◎小山真司)
「大津はもちろん強敵」
右サイド深くに追い込み、プレッシャーを掛けてボールを奪いに出る。2-0とリードして折り返した後半、57分のこと。松木玖生は相手のクリアが足に当たって前にこぼれると、そのまま先に自分のプレーエリアに収めた。右足でボールを触って左足の後ろ側を通し、左足の前にボールを置く華麗なテクニックを見せると、角度のないところからコンパクトに左足を振り抜いた。ボールは次の瞬間、逆サイドのサイドネットに突き刺さっていた。
剛柔合わせ技のゴールで3-0。完全に試合を掌握した。決めたあとには左腕に巻いた喪章を天に掲げて、祈るように両手を合わせた。長崎総科大附の小嶺忠敏総監督が試合前日の7日に逝去、哀悼の意を示す仕草だった。
「自分たちはインターハイの初戦で長崎総科大附と対戦してベンチに小嶺先生がいらして、直接関わりはありませんが、高校サッカーを牽引された方への得点という意味です」
その後、3点を加えて6-0の大勝にも緩んだ笑顔はなし。「自分たちの運動量や走力で上回った試合だと思います」と淡々と振り返る。
青森山田は過去2大会連続で決勝で敗れているが、松木はその両方でプレーしている。高校の3年間すべてで決勝に進出すること自体、偉業だが、まだ勝ったことがないという事実が松木を突き動かす。キャプテンとして臨む最後のファイナル。
「この試合で自分たちらしいサッカーを取り戻して、生き生きとサッカーができました。次はコンディション次第で左右されると思います。大津はもちろん選手権の中でも強敵です。僕たちはまだ選手権で何も成し遂げていないので、ミーティングをしながら次に向けて頑張っていきたい」
関東第一高に新型コロナウイルス陽性者が出たことで準決勝を辞退、大津は不戦勝となって決勝に進出する。中1日で戦う青森山田とのコンディションの差は歴然だが、松木は3回も続けて負けるつもりなどさらさらない。