とにかく速い冨士村 そのほかの大化けする選手は？
――ほかに名前を挙げておきたい1・2年生はいますか？
川端 流通経済大柏のGKデューフエマニエル凛太朗（りんたろう）の能力はすごいです。2年生で、まだ波があるのですが、とにかく速い。1試合に1つは『これを止めるか！』というセーブを見せますよ。
父がセネガル国籍、母が日本国籍のデューフエマニエル凛太朗。中学までは無名の存在だったが、急成長で注目の存在に（写真◎川端暁彦）
森田 東山（京都）のMF阪田澪哉（さかた・れいや）のスピードも必見です。Ｊクラブのスカウトに話を聞いても、スピードがある選手の需要は高まっていますから、来年度が楽しみです。東山は、展開力があるMF真田蓮司（さなだ・れんじ）や、ビルドアップがうまいDF新谷陸斗（しんたに・りくと）も2年生ですね。
川端 2年生だと、瀬戸内（広島）のMF江川楓（えがわ・かえで）が面白いです。視野が広くて、うまい。U-17高校選抜の合宿でも存在感がありました。1年生なら、大津のMF碇明日麻（いかり・あすま）が楽しみな存在です。186センチの長身で、技術がある。先発ではないかもしれませんが、初めての選手権で、どこまでできるか。
森田 1年生なら、徳島商（徳島）のMF冨士村優（ふじむら・ゆう）も注目ですよね。
川端 なるほど、確かに！
森田 スピードがすごいです。相手が警戒していても、ボールを持ったらギュンと加速して、ぶっちぎる。全国でどこまで通用するのか、興味があります。
川端 ドリブルでボールを奪われて先輩に怒られても、何食わぬ顔で同じように仕掛けて、ぶち抜いているそうですね。萎縮せずにプレーできるのは魅力です。
――あまり注目されていないけど面白い、という選手は？
森田 草津東（滋賀）のMF田中将大朗が面白いです。180センチのレフティーで、仕掛けて、パスを出して、ゴールも決める。3年生になり、エースとしての仕事をするのではないかと思います。1年生のときから10番をつけていた滝川二（兵庫）のMF藤田仁朗（ふじた・じろう）も、3年生になって当たり負けしないようになりました。ドリブルでの仕掛けとパスでチャンスを作ります。
川端 東福岡（福岡）のMF浦十藏（うら・じゅうぞう）を忘れるところでした！ 鳥栖U-18から転籍した2年生で、転校後の半年間は高体連の公式戦に出られない規定で予選は出場できませんでしたが、全国ではメンバーに入るでしょう。スピードに乗った突破が持ち味のウイングです。
森田 東福岡は3年生のMF大渕来珠（おおぶち・らいじゅ）の突破力やシュート力も武器で、浦と2人だけでも攻め切って点を取れますからね。
川端 仙台育英のFW佐藤遼（さとう・りょう）、MF島野怜（しまの・れい）も良い選手です。佐藤は裏のスペースに抜けるのが得意。島野は昨年度の選手権の初戦でハットトリックを達成したように、得点力が高いのが魅力です。
――今回の選手権は2年続けてコロナ過での開催となります。
森田 苦しいときにあと一歩、足が出たり、頑張ることができるのは、試合に出られない部員の応援や情熱、保護者や関係者の声援があるからだと思います。昨年度から、その点で物足りなさを感じているので、早く以前のような状態が戻ってきてほしいです。
川端 好きな女の子にいいところを見せたい、というモチベーションでもいいんですよ。どんな形であれ成功体験を得て『俺もやれるんじゃないか』と自信をつけて、大化けする選手が出てくるのも高校サッカーの良いところ。ここで挙げた以外に、そういう選手もたくさん出てきてほしいですね！
司会・構成◎石倉利英 写真◎川端暁彦、森田将義、石倉利英
PROFILE
川端暁彦（かわばた・あきひこ）／『エル・ゴラッソ』元編集長で、現在はフリーランスの編集者兼ライター。育成年代を中心に日本サッカー界を幅広く取材している。
PROFILE
森田将義（もりた・まさよし）／テレビ局の構成作家などを経て2012年からサッカーライターとして活動中。関西を拠点にジュニアから大学までの育成年代などをカバー。