12月28日に開幕する第100回の高校選手権。長い伝統と歴史に彩られている大会では、過去に多くのヒーローが誕生してきた。高校サッカーを現場で取材する川端暁彦氏、森田将義氏の識者2人が、今大会注目の新しいヒーロー候補を紹介する。

アンリは『桜木花道』 気持ちが感じられる森田

――Jクラブへの加入が内定していなくても、注目の選手はたくさんいますね。

川端 尚志(福島)のDFチェイス・アンリは代表格ですね。獲得を目指しているJクラブはありましたが、本人が欧州志向なので、卒業後は欧州のクラブに行くでしょう。今年の夏にAZ(オランダ)の練習に参加したときも、現地での評価は高かったそうです。トップチームではありませんが、アヤックスとの試合でも起用されて、本人も十分やれるという手応えをつかんだと聞いています。

森田 高校1年のときに国体で初めて見て、身体能力とか競り合いの強さ、スピードなど、ポテンシャルに驚きましたよ。

川端 その頃はまだ、サッカー未経験者みたいな印象でしたよね。

森田 確かに。サッカーのことを分かっていない感じでした。

川端 僕は高校1年のときに初めて見て『桜木花道』だと思いました(笑)。技術は粗く、戦術的にも分かっていないんじゃないか、という動きをするときもあるけど、ボールに飛びつく速さや、ヘッドの打点の高さは、とんでもないレベル。しかも、そういう生まれ持った才能に溺れるタイプではなく、誰に聞いても「向上心、学ぶ姿勢が素晴らしい」と言います。できているふりをせず、分からないことは聞きに行く。今大会のプレーも、将来も楽しみです。

森田 大津(熊本)のMF森田大智(もりた・だいち)は、平岡和徳総監督が「自分の現役時代みたい」と言っていたエレガントな選手です。その一方で、うまいだけではなく、俺が何とかしなければいけない、という気持ちが伝わってくる。インターハイの準々決勝で静岡学園に圧倒されて、走れなくなって後半途中に交代で退いた後、地面を殴りつけて悔しがっていました。それを選手権で晴らせるのか、注目しています。

川端 エレガントと言えば、川畑優翔(かわばた・ゆうと、流通経済大柏=千葉)もエレガントで、プレーの引き出しが多いアタッカーです。試合の取材に行くとスタッフから「カワバタ、サボるな!」「カワバタ、ちゃんとやれ!」という声が飛ぶので、こちらもダメージを受ける(笑)。流通経済大柏は川畑のワンマンチームではないので、楽しみです、お互い勝ち上がると、2回戦で静岡学園と対戦するのも注目ですよ。

――1・2年生の注目選手は?

森田 神村学園(鹿児島)のFW福田師王(ふくだ・しおう)とMF大迫塁(おおさこ・るい)が、2回目の選手権でどんなプレーを見せるのか。福田は天性のストライカーですね。そこに足を伸ばせるのか、 というところに届いてシュートを打ったりするし、そこに顔を出すか、というところからゴールを決める。

川端 運動能力は高いですけど、表現が難しいですよね。

森田 嗅覚が優れている、というタイプではないし…。

川端 ボールがないところでも動けますから。もっと天才的な感じというか。城彰二の高校時代が近いイメージかもしれません。

――大迫の注目度も高いですね。

川端 「結果を出さなければダメ」と話していて、一皮むけた感じです。パスで攻撃を組み立てるだけで満足せず、ゴールにこだわるようになり、実際に結果を出している。うまい選手から、一つ上のレベルになりつつあると思います。

福田とともに1年生から注目を集める神村学園の大迫。得点へのこだわりが強くなっている(写真◎川端暁彦)

森田 中学3年で国体に出たときに「僕は守備の選手です」と言っていました。高校1年でも黒子役というスタンスでしたが、いまはトップ下で「点を取りたいと思って、トップ下をやりたいと言いました」と。楽しみですね!