上写真＝神村学園のU-17日本代表DF竹野楓太（左）と山梨学院のDF藤井サリュー（右）。どちらも可能性を感じさせる右SBだ（写真◎川端暁彦）
［識者プロフィール］
川端暁彦（かわばた・あきひこ）／『エル・ゴラッソ』元編集長で、現在はフリーランスの編集者兼ライター。育成年代を中心に日本サッカー界を幅広く取材している。
森田将義（もりた・まさよし）／テレビ局の構成作家などを経て2012年からサッカーライターとして活動中。関西を拠点にジュニアから大学までの育成年代などをカバー。
※サッカーマガジン2026年2月号に掲載された記事を再構成
メンディーはスーパータレント、竹野は注目株の右SB
――連覇を狙う前橋育英にも、複数のJクラブに進む選手がいますね。
森田 MF柴野快仁（しばの・はやと）は今治加入が内定しています。ボールが持てるし、そこを通すか、というパスを出せるので、違いを生み出せる。昨年度の選手権はケガもあって出場時間が短かったので、燃えているでしょう。
川端 ボールの予測力が優れていて、守備でも貢献できます。予選の決勝ではヘッドで決勝点を挙げましたが、そういえば昨年度の選手権決勝でもヘディングで同点ゴールを決めている。それが持ち味でもないのに、大事なときにヘッドで決めるのは、何か持っていますね（笑）。
森田 山形に加入するキャプテンのMF竹ノ谷優駕（たけのや・ゆうが）は、運動量を生かした堅実なプレーが昨年度も光っていました。話を聞くと大人びていて、リーダーシップを感じさせます。
川端 名古屋に進むDF久保遥夢（くぼ・はるむ）は、184センチの高さを生かしたヘディングの強さが光るCBです。未完成の部分もありますが、大型でもしっかりボールを持つことができるので、伸びしろがありそうですね。
――昨年度の選手権で活躍した選手の1年後も期待されます。
川端 昨年度5得点を挙げて得点王に輝いた堀越のFW三鴨奏太（みかも・そうた）は、自分で仕掛けてフィニッシュまで持ち込めます。今年度はキャプテンで、選手主体で練習内容や試合のメンバーを決める『ボトムアップ理論』の堀越では、エースとは別の重責もありますが、選手権で得点を決めた実績がある選手がいるのは、チームにとって大きな武器になります。
森田 チームの得点源という点では東福岡のFW齊藤琉稀空（さいとう・るきあ）も重要な存在です。身体能力が高く、正確ではなくてもパスを送れば何とか収めてくれるし、こぼれ球を拾ってシュートまで持ち込んでくれる。攻撃の逃げ道として機能しています。
川端 昨年度初戦敗退の雪辱を期す青森山田のGK松田駿（まつだ・しゅん）は、岡山加入が内定しています。現代のGKらしいキックの良さに加えて、大型でしっかりシュートを止められるし、PKにも強いです。
――Jクラブに加入する選手以外で注目すべき存在はいますか。
川端 今年のU-17ワールドカップに出場した流通経済大柏のDFメンディーサイモン友（ゆう）は注目です。フィジカル能力が高く、ボールを持つことも、しっかり蹴ることもできる。ワールドカップと重なって予選は不在でしたが、本職のSBに加えて、ボランチでもCBでも、FWでもプレーできる2年生のスーパータレントです。
森田 インターハイで見たときに、ことごとく相手に競り勝っていて、すごい素材だと感じました。先輩にいじられている様子を見ていると、キャラクターもいいですよね。
川端 そう、ムードメーカーなんです。インターハイでは大津との準決勝のPK戦で、9人目で外してチームが敗れてしまった。U-17日本代表のワールドカップ期間中のPK練習を見ていても、メンディーは1本1本、ものすごく集中して蹴っていました。3年生の先輩たちを負けさせてしまった借りを、選手権で返したいと燃えているはずです。
――そのほかの2年生は？
川端 同じくU-17ワールドカップに出場した神村学園のDF竹野楓太（たけの・ふうた）は、182センチのサイズとスピードを併せ持つ注目株の右SBです。U-17日本代表に呼ばれるようになったのは今年からで、最初の海外遠征での出来はひどかったそうですが、次の試合で修正したと聞いています。ワールドカップでもハーフタイムを挟んで素晴らしいプレーを連発したりして、適応力がありますね。
森田 2年生といえば、山梨学院のDF藤井（ふじい）サリューも面白い右SBです。とにかく速くて、あれほどのスピードはめったに見られない。こんな選手がいるのかと、インターハイでは個人的に最大の発見でした。
川端 オーバーラップだけでなく、守備でも速さが生きるタイプですよね。素晴らしい素材です。
司会・構成◎石倉利英
※後編に続く