第100回高校選手権の島根県予選が10月21日に開幕した。三刀屋高に競り勝った益田翔陽高の決勝点を決めたのは、高校からサッカーを始めた3年生MF豊田琉斗。公務員試験との両立で部活動を続け、大仕事をやってのけた。

上写真=チームを勝利に導いた豊田。試合後に満面の笑みを浮かべた(写真◎石倉利英)

「全国大会に近づきたい」

 益田翔陽高が先行するも、そのたびに三刀屋高が追い付き、前半を終えて2-2という点の取り合いとなった一戦。その後はスコアが動かず、40分ハーフの前後半も残りわずかとなったところで、益田翔陽の神門良博監督はMF豊田琉斗をピッチに送り込んだ。

 益田翔陽はインターハイ予選後も4人の3年生が部活動を続けており、この日はGK杉内光、DF大畑晃人、MF三浦直也が先発したものの、豊田は3年生で唯一のベンチスタート。だが前日のミーティングで神門監督は「どこかで豊田を投入する」と選手たちに伝えており、勝負の時間帯で登場した豊田は「ピッチに入ったときから、絶対に決めてやると思っていた」と振り返る。

『有言実行』の瞬間が訪れたのは、後半アディショナルタイムの80+1分だった。エリア内でボールを持つと、詰めてきたGKの右を抜く右足シュートでネットを揺らす。3-2の勝利を引き寄せる劇的なゴールを決めた豊田は、祝福に駆け寄るチームメイトを振り切ってベンチへと走り、神門監督と抱き合った。

決勝点を決めた豊田(7番)はベンチの前で神門監督と抱き合って喜ぶ(写真◎石倉利英)

 中学までは陸上競技の短距離をやっていたが、「団体競技にあこがれがあり、サッカーにも興味があった」との理由で高校からサッカーを始めた。当初はインターハイ予選後に部活動をやめるつもりだったが、3人の同期の存在に背中を押され、選手権予選に臨むことに。公務員試験の勉強と両立しており、すでに1次試験は合格。益田翔陽で「技術面だけでなく、オフ・ザ・ピッチも鍛えてもらったので、いま公務員試験とサッカーを両立できている」と感謝する。

 22日の2回戦では江津高・江津工高合同チームと対戦する。豊田は「一つでも上に勝ち上がって全国大会に近づきたい」と力強く語り、高校サッカー最後の舞台での、さらなる活躍を誓っていた。

取材・写真◎石倉利英