島根・出雲工高の女子高校生、原希夢さんが、男子高校生の公式戦で副審を務めた。小学2年生から男子と一緒にプレーする一方、昨年に3級審判員の資格を取得。今後も選手と審判員、両方での成長を目指している。

中学と高校で男子サッカー部に所属

 3歳上の兄・歩夢さんがサッカーをやっていた影響で、小学2年生のときにサッカーを始めた原さんは、兄と同じ地元のクラブ、北陽ウインズSCで男子選手と一緒にボールを追いかけた。小学校卒業後はディオッサのU-15でプレーしながら、通っている出雲三中の男子サッカー部にも所属。出雲三中でも公式戦に出場するなど、男女の枠を超えた環境で成長を続けた。
 
 高校進学後もディオッサのユースでプレーしながら「もっとサッカーがうまくなりたいと思って」、かつて兄が所属していた出雲工高の男子サッカー部に所属している。高校では男子の公式戦に出場できないが(現在の規定では、中学までは女子も男子の公式戦に出場できる)、ディオッサの練習がない日は男子と同じ練習メニューに取り組む。

出雲工高サッカー部では、男子部員に混じって同じ練習メニューをこなす(写真◎石倉利英)

 高校の指導を始めて20年になる同高サッカー部の角田裕之監督にとって「女子の選手を受け入れるのは初めて」。それでも原さんには当初から、男子と同じように接すると伝えてあり、「昨年の夏合宿でも、男子の選手が暑さに参っている傍らで、準備や後片付けを黙々とやっていました。部員の一人として、とてもしっかりやっている」と称賛する。

 角田監督は1級審判員の資格を持っており、Jリーグの試合も担当しているが、原さんの3級資格取得に際して「アドバイスなどは何もしていない」と語る。それでも冒頭に紹介した男子高校生の試合を見て「状況に応じた基本的な体勢も、きちんとできていました。素直な性格なので、今後も学んだことを確実にやっていけるのではないか」と期待を寄せる。

 上々に見えた『デビュー戦』には課題も残った。主審からは見えにくいエリアで、反則を取るべきプレーが見えていたが「一瞬ためらってしまって、旗を振って主審に伝えることができなかった」と反省。今後に向けて「どんな試合でも担当できるように走力を高めることや、知識を深めること、経験を積むことが必要」と今後を見据える。

 将来的に選手と審判員、どちらの道に進むかは決めておらず、まずはディオッサと部活動を両立しながら「選手と審判員、両方で成長していきたいです」と意欲十分。2級や1級の資格取得、なでしこリーグやJリーグの試合を担当する夢を持ちながら「今後も機会があれば、男子の公式戦を担当してみたい」と笑顔で意気込みを語った。

取材・写真◎石倉利英