第99回高校選手権の都道府県予選が各地で開催されている。10月24日の島根県予選2回戦で、優勝候補筆頭に挑んだのが松江南高MF宍道日向。ゴールはならなかったものの、高校サッカー最後の舞台で奮闘した。

上写真=立正大淞南の黄色い壁に立ち向かった宍道(写真◎石倉利英)

「部活動を続けてよかった」

 前日の1回戦に続く10月24日の島根県予選2回戦には、シード校が登場。5年連続19回目の出場を目指す立正大淞南高は、横浜マリノス(F・マリノス)などで活躍した元日本代表DF小村徳男を輩出している松江南高を8-0で下し、順当に初戦を突破した。

 失点を重ねながらも、松江南は最後まで粘り強く食い下がった。メンバーの一人、MF宍道日向はチーム唯一の3年生。高校サッカー最後の舞台で、試合終了の瞬間までゴールを目指した。

 当初はインターハイ後に部活動をやめ、受験に備えるつもりだった。だが新型コロナウイルスの影響で中止となり、島根では県予選の代替大会も開催されず。「やり切って終わりたいと思っていましたが、大会がなくなって、心残りだった」という思いから、選手権を目指して部活動を続けることにした。

 1、2年生の新チームに1人だけ残り、「自分が残ってもいいのだろうか、と思っていた」という葛藤を抱えながらも練習に励んだ。選手権予選の組み合わせが決まり、1回戦を突破すれば立正大淞南と対戦するブロックに。23日の1回戦では出雲北陵高を6-0で下し、挑戦権を獲得してこの日を迎えた。

 試合は立ち上がりからボール支配率で圧倒され、苦戦を強いられる。右サイドハーフに入った宍道も自陣深くまで戻って守ることを余儀なくされるが、それでも次々に失点し、0-4で前半を終えた。

 立正大淞南は守備も堅く、まさしく黄色い壁となって立ちはだかっていた。だが後半に風上に立った松江南は、43分(40分ハーフ)に大きなチャンスを作る。左サイドに回っていた宍道が「サイドバックの裏が空いていることは前半から分かっていたので、狙っていた」という形から、スペースでパスを受けてカウンターでゴールに迫った。

 追走する相手DFをドリブルで振り切り、左足でニアサイドを狙ったものの、「コースが甘くなった」というシュートは立正大淞南GK長野大河に防がれてCKに。結果的に、この日最大の決定機を逃した松江南は、その後に4点を追加され、無得点のまま試合を終えた。

苦しい状況が続きながらも、懸命に局面の打開を試みた(写真◎石倉利英)

 大敗したとはいえ、高校サッカー最後の試合を終えた宍道の表情は、充実感にあふれていた。

「部活動を続けてよかったです。あそこでやめていたら、心残りのままで終わっていました。最後に島根で一番強い立正大淞南と対戦できて、すべてを出し切り、高校サッカーをやり切ることができました」

 大学進学を目指し、進学先でも体育会でサッカーを続けるつもりだ。力を出し尽くして「これから勉強に切り替えます」とニッコリ。次のステージに向けて、サッカーのフィールドから、机の上に戦いの舞台を移す。

取材・写真◎石倉利英