8月1日に沖縄県の「金武町フットボールセンター(ローン)」で決勝が行なわれた『令和元年度全国高等学校総合体育大会サッカー競技 男子』(以下、インターハイ)。真夏の炎天下で繰り広げられた7日間の熱戦を、現地取材した川端暁彦氏が総括する。

上写真=インターハイを制した桐光学園高校。昨年度大会で準優勝に終わった悔しさを晴らした(写真◎川端暁彦)

7日で最大6試合

 令和最初の全国高等学校総合体育大会男子サッカー競技の王者は桐光学園高校と決まった。

 日本代表選手も複数輩出する平成の高校サッカー界を代表するチームは、ただ日本一のタイトルだけは縁がなかった。そんなチームが積年の壁を破り、令和最初の王者に輝くというフィナーレだった。

 真夏に開催される高校総体は特異な大会だ。7日で最大6試合をこなすスケジュールの一方で、35分ハーフで決勝以外は延長なしというレギュレーションは番狂わせを自然と促すような仕組みである。

 昨年からは前半と後半の半ばに3分休憩のクーリングブレイクが入り、さらにそのクーリングブレイクを挟んだ終盤には通常の飲水タイムも設けられる形となっている。暑熱環境での選手の安全面に配慮した措置だが、試合がぶつ切りになるのは否めない。劣勢にあったチームはそこで体力も精神面もリフレッシュして、戦術的にも立て直せるからだ。京都橘・米澤監督の言葉を借りると、「やっと1面を攻略したと思ったら、リセットされてまた1面が始まる」ような感覚に陥ることとなる。

 このため、暑い季節における従来の王道であったポゼッションしてボールを動かして相手を疲れさせるような戦術はあまり戦果を挙げられない面があり、全体にロースコアのゲームが非常に多くなった。我慢比べのような試合が続く中で、5試合1失点と頑健な守備が光り、接戦の中で個の力で勝利を引き寄せることができるスーパーエース、FW西川潤がいた桐光の優勝はロジカルな結末だったかもしれない。

 桐光は昨年も決勝まで戦い抜き、選手とスタッフにその経験値が残っていたのも大きい。コンディショニングなど準備の部分に手応えを感じていた鈴木勝大監督は、前年から大きくやり方を変えず、ただ、「今年は『優勝』という言葉を言いすぎないようにした」というメンタル面だけ、力んでしまった昨年の反省を踏まえて微調整。決勝も「まるで初戦のような気持ちで」戦い抜き、見事に初タイトルを手に入れた。

文◎川端暁彦

サッカーマガジン 2019年9月号