天皇杯 JFA 第105回全日本サッカー選手権大会は11月22日に決勝を迎え、FC町田ゼルビアがヴィッセル神戸を3-1で破り、初めてのメジャータイトル優勝を果たした。チーム2点目を奪ったのは相馬勇紀。「理想以上の試合運び」で手にした優勝をじっくり味わった。

上写真=藤尾翔太のゴールで3点リードして、相馬勇紀も最高の笑顔!(写真◎高野 徹)

■2025年11月22日 天皇杯決勝(観衆31,414人/@国立)
町田 3-1 神戸
得点:(町)藤尾翔太2、相馬勇紀
   (神)宮代大聖

「さすが名将、おっしゃる通りになりました」

 FC町田ゼルビアが6分に藤尾翔太のゴールで幸先よく先制すると、さらに流れを引き寄せたのは相馬勇紀の左足のフィニッシュだった。

 32分、右サイドからミッチェル・デュークが左のオープンスペースへと大きく展開する。そこに走り込んだのがこの背番号7だ。

「前半から酒井(高徳)選手がかなり上がっていたのを見ていて、守備は今日は僕の役割として基本的には山川(哲史)選手へプレッシャーをかけることだったので(酒井は)後ろに任せつつ、あそこの間のスペースをずっと狙っていました。そこにデュークからいいボールが来ました」

 神戸の攻撃を弾き返したクリアボールを収めたところから攻めに転じたから、相馬の前にはスペースが広がっていた。そこで受けると、そのまま自慢のスピードを生かしてゴールへ一直線。

「最初は強いシュートをファーサイドに蹴ろうかと思ってたんですけど、前川(黛也)選手が直前で寄せてきたのを見て、チップキックに変えました。狙い通りでいいゴールだったと思います」

 このあと、後半に入って56分に藤尾がもう1点を加え、宮代大聖に1点を返されたものの、落ち着いて逃げ切って3-1で歓喜の瞬間を迎えた。その展開は「自分たちの理想以上の試合運びだった」という。

「戦術と戦略のところで、スタッも含めてみんなでどう戦おうか考えていたときに、やっぱり良さを出そうよという話で、とにかく前から強度を出して、最初の15分で相手を押し切って勝とうと」

 黒田剛監督は青森山田高校を率いていた時代に決勝戦を何度も戦った自らの経験から「前半の15分で必ず得点が動く」と話したという。その通りに先制ゴールが生まれて、相馬も思わず「さすが名将、おっしゃる通りになりました」と笑わせた。

 ところで、勝負を決定づけた3点目では「陰のアシスト」も披露している。中盤でボールを収めた林幸太郎が短く前に出したところには、藤尾と相馬の2人がほぼ同時に走り出していた。ただ、相馬は少し左に出るようなコースを選んだ。これが功を奏したのだ。

「ボールが来たら決められる自信はあったんですけど、彼のスーパーシュートが決まってよかったです。あそこは、左にふくらんで相手を引っ張れたので、シュートコースを開けることができました」

 ほんのわずかでも、藤尾に時間とスペースを与えた効果的なラン。ゴールへと素早く迫るチームの統一された意志が刻まれた選択だった。

 タイトル獲得を熱望したシーズンで、ときにスタッフとぶつかることもあったという。「思ったことは必ず伝える」のが信条だからだという。「でも、いいディスカッションができた」とピッチ外でも頼れる存在となって、このクラブに初めてのタイトルをもたらした。

「(タイトルへの)欲はあるんですけど、さらに出てきました。そうやって積み重ねられることが良いことかなと思います」

 現在、AFCチャンピオンズリーグエリートを戦っていて、この天皇杯の優勝で2026-27のAFCチャンピオンズリーグ2への出場権も獲得した。手に入れたい冠なら、まだまだある。そのための戦いはもう始まっている。